AIは特定の業務を自動化できるため、企業の生産性・作業効率を大幅に向上させることが可能です。
本記事では、コールセンター事業にAIを活用する方法やシステム導入事例について詳しく解説します。
1.コールセンターにおける課題

コールセンターは、顧客との直接的な接点を持つ重要な部門ですが、業務の複雑化や人材不足、コスト増加など、多くの課題を抱えています。
ここでは、コールセンターにおける課題を解説します。
以下の動画では、カスハラ対策として生成AIを導入している事例が紹介されています。
【参考動画】
(1)人材不足と高い離職率
電話対応やクレーム対応などのストレスが多いことから、コールセンターのオペレーターは離職率が高い傾向にあり、採用後も定着が難しいことから人材不足が深刻化しています。
厚生労働省が発表した「令和5年上半期雇用動向調査結果の概要」によると、コールセンター業が該当する「サービス業(他に分類されないもの)」の離職率は11.7%となっています。
ほかの業種に比べて人材不足が深刻といえる状況にあり、早急な労働環境の改善が求められています。
(2)人材教育に要するコストと時間
コールセンター事業は、人材不足と合わせて教育に必要なコストや時間も課題となっており、企業によっては教育マニュアルを用意していますが、適切な応対をするには知識と技術を身につけるには時間がかかるのが一般的です。
すでに在籍しているオペレーターが教育に関わるものの、リソース不足から業務効率が悪くなる可能性も高いです。
十分な人材教育ができていない状態で新人のオペレーターが対応すると、かえって顧客の不安が増える原因や新人オペレーターの離職を招く場合もあります。
即戦力を求める現場と高負担な労働環境から、人材教育は多くのコールセンターで課題となっています。
(3)スキルレベルの差
コールセンターでは、離職率の高さからスキルの高いオペレーターを安定的に確保することが難しいという課題があります。
その結果、オペレーターごとの対応品質にばらつきが生じ、以下のように顧客満足度の低下につながるリスクが発生します。
| 課題 | 企業への影響 |
|---|---|
| 対応品質の不一致 | 顧客の不信感増加、クレーム発生 |
| 教育コストの増加 | 育成コスト増加、即戦力不足 |
| 顧客対応の属人化 | 業務負荷の偏り、離職率の上昇 |
スキルレベルのばらつきによる影響は、企業の信頼性に関わる問題につながるため、早急な対応が求められます。
2.AIとコールセンターについて

従来のコールセンターはオペレーターがユーザーと直接会話することが一般的でしたが、AIが一部の業務を担うことで、業務負担の軽減などに役立てられています。
ここでは、AIとコールセンターについて解説します。
(1)AIとは
AI(Artificial Intelligence)とは、人間の言葉の理解や認識、推論などの知的行動ができるシステムのことです。
日本語では「人工知能」と呼ばれており、IT化が進んだことから幅広い業界でAIが取り入れられるようになりました。
AIには「汎用人工知能」と「特化型人工知能」の2種類があり、それぞれ以下のような特徴があります。
| 汎用人工知能 | プログラミングされた作業以外でも自分で考えた行動が可能 |
|---|---|
| 特化型人工知能 | プログラミングされた作業内容をもとに自動的な思考・検討が可能 |
現在では特化型人工知能が採用されることが多く、自動運転や画像認識、会話などに活用されています。
AIコールセンターにおいても特化型人工知能が導入される傾向にあり、オペレーターの負担を軽減しながら顧客満足度の向上にもつながっています。
(2)コールセンターにおけるAIの役割
コールセンターにおけるAIの役割は、大きく分けて業務支援・通話内容の要約と記録・自己解決への誘導に分類できます。
①オペレーターの業務支援
AIが顧客からの意見に回答できるようにすれば、電話件数を削減してオペレーターの負担を大幅に軽減可能です。
AIを活用したオペレーター支援の仕組みの一例は、以下のとおりです。
- AIチャットボット・ボイスボットが一次対応を自動化
- AIナレッジベースツールを導入し、顧客が自己解決できる環境を構築
- AIが一次対応し、適切な内容のみオペレーターへエスカレーション
AIナレッジベースツールを導入すれば、顧客が知りたい情報にアクセスできるようになりコールセンターへの問い合わせを省略できます。
また、AIがオペレーターの代わりに顧客の問い合わせへ対応するため、電話のクレーム削減にもつながるでしょう。
結果としてオペレーターの負担を軽減できるだけでなく、全体的な業務効率化へとつながります。
②通話内容の要約と記録
コールセンターにAIを取り入れることで、顧客との電話が終わった後に通話内容の要約を自動作成できます。
手作業で通話内容を要約する必要がなくなるため、オペレーターはすぐに次の顧客の対応やより付加価値の高い業務を行えるようになります。
また、通話記録ツールが搭載されたAIシステムを導入することで、顧客の通話内容を記録して会話を文字に変換することも可能です。
オペレーターは通話記録をもとに分析できるので、電話対応の品質を高めて顧客からの満足度を向上できるようになるでしょう。
通話内容の要約と記録に関して、以下の動画が参考になります。
【参考動画】
③顧客を自己解決へ誘導
顧客からの悩みにAIが対応すれば、自己解決を強化してコースセンターの電話件数を大幅に削減できます。
AIは顧客からの意見に対して、該当する項目を投げかけるので人的ミスを削減することも可能です。
また、AIナレッジベースツールを導入すれば、顧客が正確な情報に素早くアクセスすることが可能です。
3.コールセンターにおけるAIの種類

コールセンターでは近年、AI技術の導入が急速に進み、対応効率と顧客満足度の向上が求められています。AIは自動応答や本人確認、問い合わせ分析など多様な領域で活用され、オペレーターの負担軽減や24時間対応の実現に寄与しています。
ここでは、コールセンターにおける代表的なAIの種類とその活用方法を整理し、導入による業務効率化や品質向上のポイントを解説します。
(1)ボイスボット(AI自動応答)
ボイスボットとは、音声認識機能や対話型プログラムなどを用いて顧客の質問に回答できるシステムです。
AIが顧客の質問に自動応答してくれるため、オペレーターの負担を軽減可能です。
回答音声は、男性や女性の声を使い分けて設定できます。
問い合わせ業務の一部自動化や24時間対応、顧客の待ち時間短縮などができるため、顧客満足度を向上できるようになります。
顧客からの質問内容に合わせてAIとオペレーターの対応を役割分担できることから、業務効率化と対応品質の向上を両立させることが可能です。
(2)声紋認証
声紋認証とは、話者の声を解析して個人を特定できる生体認証技術です。
オペレーターが顧客に本人確認をする必要がなくなるため、本人確認時のミスを防止することが可能です。
また、セキュリティ体制の強化にもつながるので、顧客情報を安全に守りながら対応できます。
本人確認の手間や人手不足が課題となっているコールセンター事業では、声紋認証が大きな手助けとなるでしょう。
(3)チャットボット
チャットボットとは、チャット(会話)とロボットを組み合わせた技術です。
ユーザーの問いかけに対して、チャットによる顧客の自動対応ができる適切な返事をチャットで対応できるプログラムを指します。
AI搭載型のチャットボットを導入すれば、ユーザーが入力した問い合わせを分析しながら過去データをもとに最適な回答を定時できます。
またチャットボットの導入により24時間対応できるようになり、顧客満足度の向上やオペレーターの負担軽減にも役立てられます。
(4)AI検索システム
AI検索システムとは、AIがユーザーの代わりに知りたい情報を自動検索できるシステムです。
顧客からの問い合わせに対して、知りたい情報をスピーディに提示して自己解決へと導きます。
オペレーターとのやり取りが面倒な顧客もすぐに知りたい情報を見つけられるため、問題を迅速に解決できます。
顧客からの質問パターンが決まっていたり、顧客からの問い合わせが多かったりするコールセンターでは、AI検索システムの導入が適する場合が多いです。
(5)音声認識・議事録作成ツール
音声認識・議事録作成ツールとは、音声認識機能によって会話内容を読み取り自動的に議事録を作成できるツールです。
会議などの内容をリアルタイムでテキスト化できるため、コールセンターの通話記録にも活用することが可能です。
顧客からの問い合わせ内容を議事録としてテキスト化すれば、内容をまとめながら改善策を検討できるようになります。
聞き間違いや抜け漏れなどのミスを防止することもできるので、コールセンターの品質向上にもつながります。
また、スキルレベルの高いオペレーターの応答内容をテキスト化することもできるため、マニュアル化して新人オペレーターのスキル向上にもつながるでしょう。
(6)テキストマイニング・VoC分析ツール
テキストマイニング・VoC分析ツールとは、自然言語処理によって文章を単語に分割しながら出現頻度や相関関係を分析・抽出できるツールです。
コールセンター事業では複数の顧客から共通の情報が出現することも多いため、テキストマイニング・VoC分析ツールを導入すればメールやチャットなどのやり取りから重要な情報を抽出できます。
効率良く有益な情報を抽出できるので、改善につながるポイントを見つけられるようになります。
コールセンター全体に顧客からの情報を共有すれば、業務改善へとつながるでしょう。
(7)FAQシステム
FAQシステムとは、ユーザーからの質問に対して考えられる回答を自動的に表示するシステムです。
事前に回答を用意しておくことで、顧客からの質問に的確な回答を提示できるようになります。
顧客の自己解決力を強化できるようになるため、コールセンターへの問い合わせを削減してオペレーターの負担を軽減できます。
顧客からの質問は多岐に渡ることが多いことから、複数の回答をFAQシステムに設定することで求められる内容を提示できるようになるでしょう。
4.コールセンター事業におすすめのAIサービス
(1)Cloud CTI&AI

Cloud CTI&AIは、フルカスタマイズで開発するクラウドとAIを組み合わせたコールセンター向けサービスです。
ニーズに応じて専門の技術スタッフがカスタマイズを施し、業務運営の効率化と高品質な顧客体験を実現します。
独自AIによる自動応答の調整ができるため、コールセンターの顧客対応を自動化してオペレーターの負担を大幅に軽減します。
システム利用料以外のサポート費や開発費は一切不要となっており、透明な価格設定で予算内の導入が可能です。
| 料金 | こちらからお問い合わせできます |
|---|---|
| 機能 | ・ニーズに合わせたオリジナルカスタマイズ ・先行的な新機能導入 ・低価格での技術サポート |
| 所在地 | 東京都港区南青山3-8-40 青山センタービル2F |
| 運営会社 | 株式会社ストラーツ(公式HP) |
(2)Zendesk AI

Zendesk AIは、問い合わせ管理をはじめFAQ、CTI、チャットボットなどの機能を包括的に備えたシステムです。
AI機能を使った問い合わせの自動分類や担当者の割り振り、会話内容の要約などができるため、コールセンターの業務効率化につながります。
オペレーションを柔軟に拡大できるので、プロセス全体を可視化して効率的な運用が可能です。
| 料金 | 月額約8,000円〜 |
|---|---|
| 機能 | ・問い合わせの自動分類 ・担当者の割り振り ・会話内容の要約 |
| 所在地 | 東京都中央区京橋 2-2-1 京橋エドグラン |
| 運営会社 | 株式会社Zendesk |
(3)Service Cloud
Service Cloudは、柔軟な対応ができるカスタマーサービス用プラットフォームです。
問い合わせ管理をはじめ、電話やビデオ通話、チャット、メールなど幅広いチャネルで活用できます。
ほかにも問い合わせ内容の分類やよくある質問の生成にも対応しているので、企業に合わせた使い方ができます。
多言語ボットも搭載されているため、国内外の顧客とやり取りを行うことができます。
柔軟な使い方ができるAIサービスを求めるなら、Service Cloudの利用がおすすめです。
| 料金 | 月額60,000円〜 |
|---|---|
| 機能 | ・ケース管理 ・ナレッジ管理 ・スウォーミング |
| 所在地 | 東京都千代田区丸の内1-1-3 日本生命丸の内ガーデンタワー |
| 運営会社 | 株式会社セールスフォース・ジャパン |
5.コールセンターにAIを導入する流れ

ここでは、コールセンターにAIを導入する流れを解説します。
(1)課題の明確化
はじめに、コールセンター事業における課題を明確にすることが大切です。
課題を明確にしなければ、自社にとって最適なAIシステムがどのようなものかわからなくなるためです。
たとえばオペレーターの負担が多いことを課題とする場合、シンプルな質問回答ができるボイスボットのAIシステムが好相性です。
ほかにも顧客の会話データを有効活用したい場合、会話内容をテキストとして記録できる音声認識・議事録作成ツールがおすすめです。
このように企業の課題によって導入すべきAIシステムは異なるため、はじめに自社の課題を明確化しておくようにしましょう。
(2)AIツールの選定
自社の課題が明確化されたら、解決できるAIツールを選定します。
同じようなAIシステムだったとしても、提供している企業によって機能や費用、操作性、セキュリティ体制、AI精度などが大きく異なります。
ツールによっては無料トライアル期間を用意しているものもあるため、実際に利用しながら最適なAIツールを選ぶようにしましょう。
(3)必要なデータの入力
AIツールの選定後、必要なデータを入力します。
情報入力は事前準備のようなものであり、入念に行うことで運用後の調整などによる負担を軽減できます。
なおデータ量が多いと入力に時間がかかるため、運用開始日を決めながら計画的に進めることが大切です。
たとえばチャットボットのAIツールを導入した場合、想定される質問や回答などを登録しましょう。
(4)テスト運用・検証
AIツールのデータ入力後、テスト運用をはじめます。
データの登録後には不具合が起きる場合もあるため、社内でテスト運用することが大切です。
質問に対する回答や記録などを検証し、テスト運用で問題がなければ本格運用を開始します。
AIツールの運営会社に操作方法や導入のアドバイスを受け取ることもできるため、うまく導入できないときはベンダーに相談しましょう。
6.まとめ
コールセンター業務にAIを活用することで、業務支援や生産性向上などの多面的な効果が期待できます。
しかし、AIを最大限に活用するには自社の課題を明確にし、複数のシステムを比較検討することが大切です。
フルカスタマイズで開発できるCloud CTI&AIなら、現場ごとの課題にあわせた体制を構築することが可能です。
どのようなシステムまたはツールを導入したら良いのかお悩みの場合には、株式会社ストラーツにご相談ください。




