コールセンターのAI活用方法|8つの種類・費用・選び方を解説

人材不足や応対品質のばらつきなど、コールセンター運営の課題は「人を増やす」だけでは解決しにくくなっています。その解決策として広がっているのが、コールセンターへのAI導入です。

この記事では、コールセンターの8つのAIの種類から活用アイデア・導入事例・主要50社から調査した費用相場・失敗しない選び方・導入の5ステップまでをまとめて解説します。

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目次

1.コールセンターのAI導入の現状と4つの課題

コールセンターの4つの課題(人材不足と高い離職率・教育のコストと時間・オペレーターごとの差・電話増加による対応の限界)と、生成AIを実務で使う企業48.5%(CCAJ調査2025年)を示した図

コールセンターでは、すでに半数近くの企業が生成AIを実務で使っています。ここでは導入の現状を数字で確認し、そのうえでAI導入が進む理由である4つの課題を見ていきます。

(1)コールセンターのAI導入はどこまで進んでいるか

コールセンターのAI導入は、検討段階を経て実務で運用する段階に入っています。

日本コンタクトセンター協会(CCAJ)が2025年6〜7月にコンタクトセンター運営企業68社を対象に行った実態調査では、生成AIを実務で運用している企業が48.5%に達し、「活用していない」企業は2.9%にとどまりました。

市場でも、人が担うコールセンターサービス市場が縮小する一方、AIを含むソリューション市場は拡大しています。

生成AIを実務で運用している企業48.5%(33/68社)
生成AIを「活用していない」企業2.9%(2/68社)
生成AIの用途(上位3つ・複数回答)応対内容の要約74.5%/メール文章の作成63.6%/FAQの自動生成61.8%
コールセンターサービス市場(2024年度)1兆517億円(前年度比3.5%減)
コンタクトセンターソリューション市場(2024年度)4,190億円(前年度比5.0%増)

※出典:CCAJ「2025年度 コンタクトセンター企業 実態調査」/矢野経済研究所「コールセンターサービス市場/コンタクトセンターソリューション市場の調査」

用途の上位を見ると、オペレーターの置き換えではなく、応対の前後の作業を減らす目的から広がっていることがわかります。

(2)コールセンターが抱える4つの課題

AI導入がここまで進む背景には、「人を増やす」だけでは解決できない4つの課題があります。

①人材不足と高い離職率

コールセンターは、人が集まりにくく、定着もしにくい業種です。

厚生労働省「令和7年上半期雇用動向調査」によると、コールセンターが含まれる「サービス業(他に分類されないもの)」の離職率は11.8%と産業全体の8.1%を上回っています。前述のCCAJ調査でも、コンタクトセンターの採用活動に苦労している企業が82.1%、SV(管理者)に不足感のある企業が87.9%に上ります。

実際、「25~30名いた同期が、研修中に1~2名退職、入社から3か月以内で3~4名退職、1年以内には約半数が退職した」と話すコールセンター業務経験者(※)もいます。

※業務内容が異なる100~150名規模の複数のコールセンターを経験

②人材教育にかかるコストと時間

コールセンターは、採用しても戦力になるまでの教育に時間とコストがかかります。

コールセンター業務は、商品知識やシステム操作に加えてクレーム対応まで覚えることが多く、独り立ちまでの研修・OJTは長期になりがちです。そして、もし育てた人材が離職してしまえば、教育にかけたコストは回収できません。

また、リーダーやSVが人手不足で現場を離れられないときは、ベテランオペレーターに新人研修を任せることもあります。それでも、ベテランが抜けて現場が回らなくなれば研修は止まり、新人は自習になります。

現場では1日も早く独り立ちしてほしいのに、結局デビューの時期が遅れてしまいます。何時間も自習が続けば精神的なストレスになり、離職につながりやすくなるという悪循環もあります。

③オペレーター間のスキルレベルや向き不向きによる差

オペレーターの応対品質が、個人の経験や向き不向きに左右されやすいことも課題です。

オペレーターによる違いの例
  • 経験値の違いから回答を探す速さや言葉選びに差がある
  • 経験が長くても自己流の案内をしてしまうことがある
  • 傾聴が苦手で応対クレームを招いてしまう
  • 一方で、新人でもルールに忠実でフィードバックをすぐに吸収できる人もいる

コールセンター業務では言葉遣い等、必要なスキルは多くありますが、特に「傾聴力(お客様の話をよく聴き、求めていることを正しく理解する力)」と「話を組み立てる力(いかに情報を整理して分かりやすく伝えるか)」の2点は非常に重要です。

これらの違いから、「誰が電話を取るか」で顧客体験は大きく変わることになります。

④問い合わせ増加によるコスト増と対応の限界

人手に頼った運営では、問い合わせが増えるほど人件費も増えます。

増員には採用・教育の壁があり、ピーク時に対応しきれない電話は、顧客があきらめて切ってしまう「放棄呼」となり、機会損失や顧客満足度の低下に直結します。さらに、切った顧客がかけ直すことで入電数が増え、ますますつながりにくくなる悪循環にも陥りやすくなります。

問い合わせ窓口の利用実態を調べた調査でも、窓口への不満の1位は「電話がつながらない・待たされる」(36.6%)で、確実に対応できるよう整備することは重要な課題です。

出典:モビルス株式会社「お客さま窓口の利用実態調査2025-2026レポート」

2.コールセンターで使われるAIツール8種類|一覧で解説

ここでは、コールセンターで使われる8種類のAIについて解説します。

まず全体を一覧表で確認します。

種類できること向いている業務例自動化できる範囲
(1)ボイスボット(AI自動応答)電話の問い合わせに音声で自動応答する定型的な問い合わせ・予約や注文の受付一次受け〜手続きの完了まで
(製品による)
(2)チャットボットテキストの問い合わせにチャットで自動応答するWeb・LINEなどからのよくある質問定型質問への回答
(3)音声認識・議事録作成ツール通話をリアルタイムでテキスト化する応対記録の作成・応対品質のチェック通話後の記録作成(ACW)
(4)FAQシステム質問の意図を解析し、回答候補を提示する顧客の自己解決・オペレーターの回答検索回答候補の提示
(最終判断は人)
(5)テキストマイニング・VoC分析ツール通話ログ・チャットログから傾向を抽出する問い合わせ傾向の分析・FAQの改善集計と可視化
(6)感情分析AI声のトーンや言葉から感情を推定するクレーム予兆の検知・SVの介入判断検知と通知
(対応は人)
(7)AI検索システム社内文書から根拠となる情報を検索・提示するマニュアル・約款の参照が多い応対検索と提示
(8)声紋認証声の特性で本人を特定する金融・保険など本人確認が必須の業務本人確認の代替

※3章ではコールセンターにこれらのAIツールを導入した場合に業務がどのように変化するかを解説しています。
※4章ではAIと既存システムをどのように連携させるかについて紹介しています。

それぞれについて、以下で詳しく解説します。

(1)ボイスボット(AI自動応答)

ボイスボットは、電話の問い合わせに音声で自動応答するAIです。

電話の一次受けを担い、特に人材不足や夜間対応の課題に直接効きます。製品によって「聞き取りまで」か「手続きの完了まで」かが分かれるため、自動化できる範囲を確認して選びます。

ボイスボットには、会話の進め方が異なる2つのタイプがあります。

タイプ会話の進め方
シナリオ型
  • 人があらかじめ設計した分岐(「再配達なら1を」「はい/いいえで進む」などのツリー)に沿って会話が進む
  • 音声の聞き取りにはAIを使うが、次に何を聞くかは固定のシナリオが決めている
エージェント型
  • 大規模言語モデル(生成AI)が会話の文脈を理解し、次に何を聞くか・どう応じるかをAI自身がその場で判断して進める
  • 想定外の言い方や途中の割り込み質問にも対応できる

このうちエージェント型では、特定の問い合わせに限れば62%を人を介さずに完了できたという報告もあります。

出典:【ここまで進化】AIオペレーター最前線をデモで検証/次世代AIコンタクトセンターの全貌とは/大企業で続々導入&運用するほど精度が上がるワケ

詳しくは以下の記事で比較しています。

(2)チャットボット

チャットボットは、テキストの問い合わせにチャットで自動応答するAIです。

Web・LINEなど電話以外のチャネルで問い合わせを引き受け、入電を分散できます。AI型は言い回しの揺れにも対応できるため、よくある質問の大半を無人で返せます。

(3)音声認識・議事録作成ツール

音声認識・議事録作成ツールは、通話をその場でテキスト化し、応対記録を自動で作るAIです。

オペレーターの後処理時間を減らし、応対が文字で残るため品質チェックや教育の材料にもなります。また、テキストマイニング・VoC分析ツールや感情分析AIの元データにもなります。

月間100万件規模の応対ログで辞書を整備している大手運営会社では、認識精度が90%を超えると公表されており、認識精度は実用水準に達していると言えます。

おすすめの音声認識・議事録作成ツールは以下の記事で紹介しています。

(4)FAQシステム

FAQシステムは、質問の意図を解析して回答候補を提示するAIで、顧客向けとオペレーター向けの活用が考えられます。

顧客向けなら自己解決を増やすことで入電そのものを減らし、オペレーター向けなら新人でも回答を探せる環境を作ります。

(5)テキストマイニング・VoC分析ツール

テキストマイニング・VoC分析ツールは、通話ログやチャットログから問い合わせの傾向や不満を抽出するAIです。

集計結果はFAQの改善や商品改善の判断材料となり、担当者の記憶に頼らずに経営判断に使えるデータが得られます。

(6)感情分析AI

感情分析AIは、声のトーンや言葉づかいから顧客の感情を推定するツールです。

クレームの予兆をオペレーターやSV(管理者)に知らせることで、兆候の段階で助言や交代などのフォローに入ることが可能になります。クレームに発展する前に食い止められる可能性が上がります。

(7)AI検索システム

AI検索システムは、マニュアルや約款など社内文書から根拠となる情報を探して提示します。

オペレーターが情報を探す時間を削り、応答品質の均一化に効きます。文書が分厚い業種ほど効果が出やすいツールです。

(8)声紋認証

声紋認証は、声の特性から本人を特定する生体認証のAIです。

暗証番号や秘密の質問による確認を置き換え、認証にかかる時間を縮めます。確認作業が減る分、オペレーターは用件そのものの対応に集中できます。

ただし、風邪などで声が変わると認証に失敗することもあるため、従来の確認手段も残しておくことが大切です。

3.生成AIでコールセンター業務はどう変わるか|5つの活用アイデア

生成AIによるコールセンター業務の変化を応対前・応対中・応対後で示した図(トークスクリプト更新・新人研修・要約での引き継ぎ・SVのフォロー・ACWの下書き)

生成AIの登場で、コールセンターの業務は「応対前」「応対中」「応対後」のそれぞれのフェーズに変化をもたらしています。

この章では、その変化を業務の時系列に沿って5つ紹介します。

(1)トークスクリプト作成が「作って終わり」から「更新し続ける」に変わる

音声認識・議事録作成ツールと生成AIを組み合わせることで、トークスクリプトの自動生成が可能になります。スクリプトを「作って終わり」にせず、成約に至った応対データをもとに更新し続けることが可能です。

また、スクリプトが最新の応対実態を反映し続けるため、新しい商品や問い合わせへの対応が遅れません。成果につながる対応をチームで共有する効果も期待できます。

(2)新人研修が先輩の手を借りずに回るようになる

実際の問い合わせ内容をもとに練習用のシナリオを生成AIで作り、さらに対話型の生成AIを顧客役に使うことで、先輩が付き添わなくても新人がひとりで応対練習を繰り返せるようになります。

教育担当の負担を軽くできるだけでなく、相手に気兼ねなく何度でも練習でき、怒っている顧客や話が長い顧客などの場面を指定した練習も可能です。

(3)応対中の引き継ぎが「要約を渡すだけ」になる

音声認識ツールと生成AIを組み合わせることで、通話中にリアルタイムで内容を要約し続けられるようになります。

これまで上席(SV)に引き継ぐ際は、口頭で経緯を説明したり顧客にもう一度話してもらったりする必要がありましたが、これらのツールを活用することで要約を渡すだけで引き継ぎを完了させることができます。

顧客にとっても、引き継ぎのための待ち時間が減少するメリットがあります。

(4)クレームになる前にSVがフォローに入れるようになる

感情分析AIを使うことで、怒りなどの兆候を通話中に検知できるようになります。

たとえば兆候が出た通話をSVの画面に表示すれば、SVがオペレーターに助言したり途中から電話を代わったりといった対応ができ、クレームの予防に活用可能です。

感情分析ツールの選び方は以下の記事で解説しています。

一方で、オペレーター側では常に監視されていると感じてしまう心理的な負担や、SVの人数によってはアラートチェックに追われてしまうことが考えられ、注意が必要です。

対策として考えられること
  • 本当にSVのフォローを必要とする通話のみ検知できるよう調整する(誤検知の発生を確認しながら進める)
  • SVが同時に見る席数を決めておく
  • SVが不足している場合は、クレームが起きても1人でおさめられることが多いオペレーターは、チェックの対象外とする
  • オペレーターへは誤解のないように事前に説明しておく

(5)応対後の記録作成(ACW)が「下書きを直すだけ」になる

音声認識ツールと生成AIを使うことで、終話と同時に通話全体の要約が作られるようになります。
これにより、これまで数分かけて手入力していた応対記録の作成が、下書きを確認して直すだけで完成します。

実際の導入検証によると、生成AIの支援により後処理時間が1件あたり約3分から約1.5分へ半減したという報告もあります。
ただし、後処理は次の電話までに気持ちを整える時間でもあるため、オペレーターの負担への配慮も必要です(6章(6)で解説)。

4.生成AIと既存システムの連携活用方法3選

生成AIは、すでに使っているシステムと組み合わせて使うことも可能です。

この章では、既存のシステムに生成AIを連携して活用する3つのパターンを紹介します。

既存システム例連携するAIツール例何が変わるか
シナリオ型のIVR・ボイスボット生成AIの応答エンジン分岐設計なしで、言い直しに対応できる
社内マニュアル・FAQなどのナレッジAIオペレーション支援ツール(音声認識×生成AI)応対中の画面に回答候補が出る
チャットボット・FAQシステム生成AIによるFAQの自動作成更新が続き、自己解決率が上がる

(1)シナリオ型IVR・ボイスボット×生成AI応答エンジン

従来のシナリオ型IVR・ボイスボットは、人が応答の分岐を設計するため想定外の言い方に弱く、分岐が増えるほど保守の負担も大きくなるという問題点があります。

このシステムに生成AIエンジンを連携させると、分岐設計が不要で、顧客の言い直しにも対応できるようになります。

例えば、従来は「再配達のご依頼は1を押してください」と番号操作を求め、「昨日届くはずの荷物がまだ来ていない」のような自由な言い方には対応できませんでした。連携することで、発話から用件を再配達の依頼と判定し、そのまま受付まで進められます。

【導入判断の目安】

連携が効果的なケース
  • 問い合わせの言い回しが幅広い場合
  • 分岐が増えすぎてシナリオの保守が追いつかない場合
効果が出にくいケース
  • 用件が少なく、現行のシナリオで対応できている場合
  • 説明する文言が法令などで決まっており、応答を柔軟に変える必要がない場合

効果は一次解決率(AIだけで完結した割合)と有人への転送率で測ります。例えば転送率が高いままなら、有人に回す条件やAIの回答範囲を見直すなど、効果を確認しながら運用します。

IVRでの自動化は以下の記事で解説しています。

(2)社内マニュアル・ナレッジ×AIオペレーション支援ツール

マニュアルや約款、過去の応対記録といった社内のナレッジは、量が増えるほど探す時間が長くなり、応対中に調べきれず保留や折り返しが増えていきます。

この既存ナレッジに、音声認識・検索・生成AIを組み合わせたAIオペレーション支援ツールを連携させると、通話の内容に合わせて回答候補や関連資料が画面に表示できます。

例えば、「この特約は途中から外せますか」と聞かれた新人が、約款のページを繰りながら顧客を待たせていた場面では、画面に該当箇所と回答例が表示されるため、その場で答えられます。ベテランが経験と記憶で即座に答えている部分を、AIの検索と提示で補います。

【導入判断の目安】

連携が効果的なケース
  • マニュアルや約款が厚く、回答を探す時間が長い場合
  • ベテランと新人で応対品質の差が大きくなりやすい場合
効果が出にくいケース
  • 用件が単純で、調べずに応えられることがほとんどの場合
  • 参照するナレッジがまだ整備されていない場合

効果は保留の回数と平均応対時間、新人が独り立ちするまでの期間で測ります。導入後もこれらが下がらない場合は、元になるナレッジ側の整備不足(内容が古い・重複している・未登録)を考えます。

7章(2)では、これらの連携を活用した具体的な成功事例を紹介しています。

(3)チャットボット・FAQ×生成AI

既存のチャットボットとFAQシステムは、回答の更新が止まると使われなくなるという問題があります。

ここに生成AIを連携させると、通話ログからFAQが自動作成され、常に最新の内容のFAQを用意できます。さらにFAQの内容をチャットボットにも反映させることで、顧客の自己解決率が上がり、入電数そのものを減らす効果が期待できます。

チャットボットが答えられなかった質問もFAQに還流させれば、回答の網羅性が高まっていきます。AIが解決できなかった問い合わせ履歴からFAQを自動生成して学習に回す仕組みをサポート窓口で運用している大手通信会社もあります。

【導入判断の目安】

連携が効果的なケース
  • 同じ質問が繰り返し入り、FAQの更新が止まっている窓口
  • Webやアプリの利用者が多く、電話の前に自己解決を促せる窓口
効果が出にくいケース
  • 問い合わせの大半が契約内容などの個別事情で、汎用の回答を作れない窓口
  • 事故や障害の連絡など、緊急の電話が中心の窓口

効果は自己解決率と入電数(呼量)で測ります。FAQやチャットボットの利用が伸びているのに入電が減らない場合は、回答が疑問を解消しきれていない可能性があります。また、利用そのものが伸びない場合は、顧客がFAQを見つけられていない(導線の問題)ことも考えられます。

顧客の96.2%は、問い合わせ前に自分で調べて解決を試みています。FAQが見つかり、そこで答えにたどり着ければ、入電はそのぶん確実に減らせます。

出典:モビルス株式会社「お客さま窓口の利用実態調査2025-2026レポート」

5.コールセンターにAIを導入する7つのメリット|企業側・顧客側別に解説

ここでは、コールセンターにAIを導入するメリットを企業側と顧客側に分けて解説します。

対象メリット
企業側のメリット①応対品質の均一化
②業務負担と人件費・教育コストの削減
③受電機会を逃さない(24時間365日・BCP)
④通話データが企業の資産になる
顧客側のメリット①待ち時間・たらい回しが減る
②深夜や休日でも用件を済ませられる
③電話をかけずに解決できる

(1)企業側の4つのメリット

まずは、コールセンターを運営する企業側のメリットを4つ紹介します。

①応対品質を均一化できる

AIオペレーション支援ツール(音声認識ツールとAI検索システムに生成AIを組み合わせ、応対中の画面に回答候補や関連資料を表示するツール)を使えば、オペレーターの経験差による応対のばらつきを一定の水準に揃えられます。

ただし、このツールはFAQやマニュアルの中から回答候補を探して提示する仕組みのため、これらの資料が整っていないと精度は上がりません。社内情報をあらかじめ整理しておくことが重要です。

他にも、FAQシステム(質問の意図を解析して、回答候補を提示するAI)をオペレーター向けの回答検索に使うことも効果的です。誰が調べても同じ回答にたどり着くため、経験による回答のぶれを防げます。

②業務負担と人件費・教育コストを減らせる

答えの決まった問い合わせを受けるボイスボットや、ACWの自動要約で後処理を楽にする音声認識・議事録作成ツールを活用することで、オペレーターの業務負担を減らし、判断が要る対応に集中することができます。

例えば東邦ガスでは、AIによる通話のテキスト化と要約の導入で、1件あたりの応対時間を約12%、通話後の事務作業時間を約88%削減したと報じられています。(出典:CBCニュース)

オペレーターの負担軽減は離職防止の観点としても重要です。ただし件数が減ってもクレーム対応などの難しい対応の比率が上がる点には注意が必要です(詳しくは6章(6)で解説します。)。

また、チャットボット・FAQ×生成AIの運用で入電数そのものが減れば、必要な席数(オペレーターの人数)と採用数を抑えられコスト削減に有効です。さらに、教育面でも、対話型の生成AIを使ったロールプレイ研修に切り替えることで、研修に関わるスタッフを減らせます。

③受電機会を逃さない(24時間365日・多言語・BCP)

ボイスボットによる一次受けができれば、営業時間外・繁忙期・災害時も受電を継続できます。

夜間の問い合わせやキャンペーン直後の入電集中を取りこぼさず、日本語以外の問い合わせにも対応できます。

また、台風などの前に出勤できるかを確認・調整したり、感染症の流行期に衛生面の周知を徹底したりするのも多くのコールセンターに共通する苦労です。AIは十分な人数のオペレーターが出社できないときも受電を続けられるため、つながりにくくなることを抑えられます。これらは、BCP(事業継続計画)としても有効です。

ただし、AIが答えられなかった問い合わせの扱いは、あらかじめ決めておかなければなりません。「用件と連絡先を聞き取って記録し、翌営業日の朝に折り返す」「緊急の内容は当番の担当者に転送する」といった取り決めが重要です。

④通話データが企業の資産になる

テキストマイニング・VoC分析ツールを使えば、担当者の記憶に残るだけだった顧客の声を、FAQの追加や商品改善に使える形で集計できます。蓄積した顧客の声は、担当者が入れ替わっても失われない企業の資産になります。

例えば「月に一度、分析結果を見てFAQや商品の改善を決める」など、結果を確認して活かす場を用意することが重要です。

テキストマイニングの活用方法は以下の記事で詳しく解説しています。

(2)顧客側の3つのメリット

次に、コールセンターにAIを導入したときの顧客側のメリットを3つ紹介します。企業側の取り組みは、顧客の体験の改善にもつながります。

①待ち時間・たらい回しが減る

音声認識ツールと生成AIによる応対中のリアルタイム要約があれば、オペレーター間や上席(SV)へ要約を渡すだけで引き継げるため、顧客は同じ説明を繰り返さずに済みます。

また、ボイスボットが一次受けした内容を有人に引き継ぐ場合にも有用です。

②深夜や休日でも問い合わせが可能

ボイスボットによる一次受けが可能であれば、顧客は窓口の営業時間を気にせず問い合わせできるようになります。

仕事終わりの夜間や休日でも、再配達の依頼や予約の変更といった用件をその場で済ませられます。

③電話をかけずに解決できる

AI型のチャットボットやFAQが整っていれば、顧客は電話をかけなくても、自分のタイミングで調べて解決できます。

電話をかける場合はつながるまで待ち時間が発生しますが、自分で調べて解決できれば、待ち時間は必要ありません。

また、AIを活用することで、従来のチャットボットやFAQと比較して言い回しの揺れをくみ取って回答できたり、内容も最新に保たれるため、「調べたが解決しなかった」が起きにくくなります。

6.コールセンターにAIを導入する6つのデメリット・注意点と対策

コールセンターAIの6つのデメリットと対策(誤回答・AIに任せられない対応・学習期間・個人情報の管理・顧客の反発・人への負担集中)の図

コールセンターへのAIの導入は多くのメリットがありますが、注意すべき点もあります。
この章では、導入前に知っておきたい6つのデメリットと、その対策をセットで紹介します。

(1)生成AIが誤った回答を出す可能性がある(ハルシネーション)

生成AIには、事実と異なる内容をもっともらしく答えてしまう「ハルシネーション」という現象があります。

もし、存在しない返品条件を顧客に案内してしまえば、クレームや損害につながります。

対策例
  • 回答の根拠を社内のFAQ・マニュアルに限定する
  • 重要な案内は、チャット・メールでは送信前に人が確認し、電話では事前に承認した回答範囲だけに答えさせる
  • 答えられない質問は人に転送する

さらに開発の現場では、応対するAIとは別に監視用のAIを併用し、誤回答を検知したら即座に応答を止めて人へつなぐ仕組みも使われ始めています。

(2)クレーム対応などAIに任せられない案件は人が対応できるよう設計する

AIを導入しても、すべての対応を無人化できるわけではありません。特にクレーム対応は、相手の感情を受け止めながら判断する仕事であり、AIに任せるとかえって不満を大きくしかねません。

クレームや個別事情の判断が必要な案件は、人が対応する前提で設計します。

対策例
  • 有人対応をなくすのではなく、1件あたりの対応時間を短くすることを目指す
  • 定型的な用件はAIが一次受けし、要約を添えて人に引き継ぐ
  • 「怒りの兆候を検知したら転送」「AIが2回答えられなかったら転送」など、人に回す条件をあらかじめ決めておく

コールセンター無人化の費用対効果については、以下の記事で詳しく解説しています。

(3)効果が出るまでに学習・チューニングの期間が必要

AIは、導入直後は想定外の質問に答えられなかったり、聞き取りを誤ることもあります。実際の問い合わせデータをもとに回答範囲やシナリオを調整していく期間が必要です。

対策例
  • 最初から全業務に適用せず、よくある問い合わせだけに絞って小さく始める
  • 実際の問い合わせデータをもとに調整のサイクルを回す
  • 精度が安定してから対象を広げる

調整を重ねる際は「1か所直すと別の箇所の精度が落ちる」現象(デグレーション)が起きやすいという、開発現場からの指摘もあります。修正のたびに全体の動作を確かめ直す前提で計画することが重要です。

(4)通話データ・個人情報のセキュリティ管理

コールセンターの通話には、氏名・住所・契約内容といった個人情報が含まれます。AIに通話データを処理させる以上、その管理は導入企業の責任です。

IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、AI利用に伴うリスクが組織向け脅威の第3位に初めて選出されています。通話データや個人情報を大量に扱うコールセンターでは、特に注意が必要な領域です。(出典:IPA(情報処理推進機構)「情報セキュリティ10大脅威 2026」)

対策例
  • AIに渡してよいデータの範囲と扱いを社内で決めておく
  • 入力データが学習に使われない設定・契約になっているか確認する

(5)顧客がAI対応に反発するリスク

顧客の中には、AIによる応対そのものに抵抗を感じる人もいます。また、WebやFAQ、チャットボットで解決しなかったために、「人と話したい」と電話してくる人も一定数います。

企業の電話窓口のAI音声受付について「特に不安や不満は感じない」と答えた人は26.7%にとどまるという調査もあり、対策が必要です。(出典:PR TIMES『「AI音声の電話受付」に対し約7割が不安・不満を実感!?』)

対策例
  • AIが聞き取れなかったときや顧客が希望したときに、「オペレーターにおつなぎしますか」とAIから申し出る
  • 最初の音声案内から、決まった番号を押せば有人につながる導線も残す

用件を機械に話すことに慣れていない人や、急いでいるのに聞き取りに手間取られた人は「人を出してほしい」と感じます。この不満を放置すると長期的には致命的な顧客離れにつながるリスクがあります。そのため、上記のような有人対応への切り替え手段を残しておくことも重要です。

(6)負担が大きい仕事がオペレーターに残る

AIが定型対応や後処理を引き受けると、クレームなど負担の大きい対応がオペレーターの仕事として残ります。

後処理の時間は、気持ちを整える時間でもあります。実際に、重い対応のあとは深呼吸をしながら後処理をする、というコールセンター業務経験者の声もあります。AIにより後処理の時間が短くなると、休む間もなく時間がかかる難しい電話が続きやすくなります。

さらに、こなせる件数が減って評価が下がれば、やる気の低下や離職につながる悪循環にもなりかねません。

対策例
  • 難しい対応のあとに、短い休憩を取れるようにする
  • 怒りの兆候をAIで検知し、SVがリアルタイムでフォローに入る(3章(4)参照)
  • 通話時間や後処理時間を評価から外し、初回解決率やアンケート結果など「質」を評価する

AIで楽になる分、残る仕事の負担が増えないよう、休憩・フォロー・評価の見直しまでセットで考えることが大切です。

7.AI導入の効果がわかる事例5選

コールセンターへのAI導入は、実際にどのような成果につながっているのでしょうか。
この章では、数値や取り組みの内容が一次資料で公開されている5つの事例を紹介します。

(1)生成AI+RAGのチャットボットで有人対応10%削減|ニトリ

取組年2024年5月プロジェクト開始、2026年7月成果発表
導入前の課題自社EC「ニトリネット」で扱う16万点以上の商品への問い合わせ対応
導入したAI生成AI+RAGのAIチャットボットと、チャネル横断のナレッジベース
成果有人対応件数を前年比10%削減/約30人分の業務工数を削減/24時間365日対応化

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000395.000002454.html

ニトリは、生成AIとRAG(回答の根拠を社内データから検索させる仕組み)を組み合わせたAIチャットボットで、有人対応件数を前年比10%削減しました。

自社EC「ニトリネット」が扱う16万点以上の商品への問い合わせにAIが自動で回答し、24時間365日の対応を実現。削減された約30人分の業務工数は、人員の削減に充てられたのではなく、遠隔接客などの高付加価値業務へ再配置されています。

AIで浮いた人手をどこに振り向けるかまで含めて設計している点が参考になります。

(2)生成AI×検索AIによる応対の属人化の解消|SBI生命保険

取組年2024年
導入前の課題数万ページに及ぶ資料から情報を探す時間の長さと、探せる人が限られる属人性
導入したAI検索AI(インテリジェント検索)と生成AIを組み合わせたシステムの構築
成果根拠ページを瞬時に検索し、顧客にそのまま案内できる要約文を自動生成

出典:https://d1.awsstatic.com/case-studies/jp/pdf/SBI-life_2024.pdf

SBI生命保険は、検索AIと生成AIの組み合わせで、回答の速さが個人の経験に左右される「属人化」を解消しました。

同社では、商品改定の履歴や特約のルールなど数万ページに及ぶドキュメントから必要な情報を探し出す時間と、その属人性が課題でした。
構築したシステムでは、検索AIが根拠となるページを瞬時に探し出し、その内容を生成AIが読み込んで、オペレーターがそのまま顧客に回答できる要約文を自動生成します。

4章(2)で紹介したAIオペレーション支援の考え方を、実際の窓口で形にした事例です。

(3)音声認識AIによる手続きの完全自動化と混雑緩和|東京電力エナジーパートナー

取組年2021年
導入前の課題3〜4月の引越し最盛期にカスタマーセンターの電話が混み合い、つながりにくい
導入したAI引越し専用ダイヤルへのボイスボット本格導入と、契約システムへの直接データ連携
成果オペレーターを介さず手続きが完結。深夜・営業時間外も受付可能に

出典:https://www.tepco.co.jp/ep/notice/news/2021/pdf/210218a.pdf

東京電力エナジーパートナーは、2021年にボイスボットを本格導入し、引越しに伴う電話手続きをオペレーターなしで完結できるようにしました。

同社では毎年3〜4月の引越し最盛期に電話が混み合うことが課題で、Webやチャットボットへの誘導だけでは解消しきれていませんでした。
導入後は、顧客が発話した引越し日・住所・氏名などを音声認識AIが聞き取ってテキスト化し、社内の契約システムへ直接連携。つながりにくい時間帯や深夜でも、自動で手続きが完結する体制を構築しました。

9章(1)で取り上げる「AIだけでどこまで完結できるか」という比較軸の、最も進んだ到達点を示す事例と言えます。

(4)AI予測モデルによる架電効率化と接触率の向上|川崎市

取組年2018年11月導入(数値は2019年8月時点)
導入前の課題保険料滞納者への電話催告で電話がつながらず、接触率が低い
導入したAI過去の折衝データなどを学習したAI予測モデルで、つながりやすい曜日・時間帯を予測して架電
成果電話催告による滞納者との接触率が5.45%ほど改善(2019年8月時点)

出典:https://www.soumu.go.jp/main_content/000820109.pdf

川崎市は、受電ではなく「かける側」の業務にAIを使い、電話催告の接触率を5.45%改善しました(2018年11月導入、数値は2019年8月時点)。

同市では、国民健康保険などの保険料滞納者への電話催告で「電話がなかなかつながらない」ことが課題でした。
そこで過去の折衝データや住民基本台帳データを学習させ、滞納者ごとに最も電話がつながりやすい曜日・時間帯を導き出すAI予測モデルを構築。「高齢者世帯は午前の早い時間帯がつながりやすい」といった予測の根拠も画面に表示されるため、オペレーターが納得して架電できる体制になっています。

(5)AIチャットボットによる照会対応の自動化とコスト削減|三井住友フィナンシャルグループ

取組年2018年
導入前の課題欲しい情報にたどり着けない・対応者のスキルで品質がばらつく・待ち時間が発生する
導入したAI自然言語処理モデルと有人チャット切り替え機能を備えた「SMBCチャットボット」
成果ボット単体での問題完結率 約9割/24時間365日の即時対応

出典:https://www.boj.or.jp/paym/fintech/data/rel180810d4.pdf

三井住友フィナンシャルグループは、2018年の時点でAIチャットボットによる照会対応の自動化を実現し、ボット単体での問題完結率 約9割に達しています。

導入前は「マニュアルはあるが欲しい情報にたどり着けない」「対応者のスキルで品質がばらつく」「同時対応数に限界があり待ち時間が発生する」という、コールセンターの典型的な課題を抱えていました。

導入した「SMBCチャットボット」は、言葉の揺らぎや曖昧な質問にも回答候補を提示でき、24時間365日の即時対応を実現。解決できなかった約1割は、対話ログを引き継いだまま有人チャットへ切り替えることで、品質の均一化とコスト削減を両立しました。

6章(2)で述べた「答えられない場合は人に引き継ぐ」設計を、生成AIが普及する前から実践していた事例です。

8.コールセンターAIの費用相場

コールセンターAIの3つの課金方式(1件あたり課金・時間あたり課金・月額固定+席ID課金)の図

コールセンターAIの費用は、課金方式・初期費用の有無・AIの種類によって大きく変わります。
この章では、料金を公開している50のサービスを調査した結果(2026年8月時点)をもとに、費用の内訳と相場の目安を整理します。

(1)費用の内訳と3つの課金方式

コールセンターAIの料金は、大きく3つの課金方式に分かれます。

課金方式仕組みと公開されている例
①1件あたり課金応答1件・解決1件ごとに費用が発生する
②時間・分あたり課金通話時間に応じて課金される
③月額固定+席・ID課金席数・ID数に応じた月額を支払う

初期費用は0円から130万円までと幅があり、初期費用のかからないサービスも珍しくありません。

また、公式の料金表には載っていない費用は別途必要となることが多いため注意しましょう。

料金表に載っていない費用の例
  • 既存システムとの連携開発
  • 導入後のチューニング
  • オペレーターの教育

あわせて、最低利用期間も契約前に必ず確認してください。

※どの方式が自社に合うかの判断は、9章(5)で解説しています。

(2)AIの種類別・費用相場の目安

AIの種類別の費用目安は、次の通りです。

AIの種類初期費用月額の目安
ボイスボット(AI自動応答)0円〜200万円1,980円〜50万円
AIチャットボット0円〜50万円980円/人〜50万円
音声認識・通話解析0円〜50万円5,980円/ID〜25万円
FAQシステム(ツール提供型)※ツールのみ。導入は自社で行う0円〜10万円3,800円〜数万円
FAQシステム(導入支援型)※ツールの導入まで含めたサービス80万〜130万円10万〜25万円
(参考)コールセンターシステム/CTI(席課金型)0円〜165万円1席あたり1,500円〜28,800円(中央値7,000円前後)

※表中のコールセンターシステム(CTI)は、2章で挙げたAIツールそのものではなく、着信の振り分けや顧客情報の表示など電話環境の土台になるシステムです。AI機能を組み込んだ製品が増えており、席課金の相場がもっとも確認しやすいカテゴリのため、参考として掲載しています。

コールセンターシステム(CTI)の費用相場と選び方は、以下の記事で15製品の料金とあわせて詳しく解説しています。

(3)費用対効果の考え方

AI導入の費用対効果は、月額の安さではなく、削減できる人件費・後処理時間と支払う総額を比べて判断します。
このとき見落とせないのが、AI機能が本体料金に含まれるか、オプションかという課金設計の違いです。

例えば、次の2つのサービスは対照的な設計です。

費用設計例
AI機能が基本料金に含まれるAmazon Connectは、月額固定ゼロの完全従量制(音声0.038米ドル/分)。AIの自動応答や会話分析が基本料金に統合されている
AI機能が別料金BIZTELの本体料金はコールセンターシステム(CTI)としての基本機能(1席あたりの内線番号や通話録音など)。AIの音声認識連携はこれとは別料金で、初期5万〜10万円+月2万〜4万円がかかる

同じ「AI対応」をうたうサービスでも、費用設計は大きく変わります。

9.失敗しないAIツールの選び方5つの比較軸

コールセンターに導入するAIの選定で失敗しないためには、以下の比較軸でサービスを見比べることが重要です。

比較軸確認すること
(1)どこまで完結できるか標準機能での自動化が「一次受けのみ」「聞き取りまで」「手続きの完了まで」のどの段階か
(2)試せるかデモ・トライアルがあるか。自社の実際の問い合わせで精度・音声の自然さ・操作性を確認できるか
(3)自社に合わせられるか応対シナリオを自社の業務に合わせて調整できるか。既存のCTI・CRMと連携できるか
(4)運用体制とサポートチューニングや、AIから人へ引き継ぐ条件の設計を伴走してもらえるか。入力データが学習に使われない契約か
(5)料金体系課金の単位(1件・分・席/ID)が自社の呼量とその変動幅に合っているか

※10章では、具体的なAIコールセンターサービスをこれら5つの比較軸に沿って紹介しています。

以下で詳しく解説します。

(1)AIだけでどこまで完結できるか

まずは、標準機能でどこまでの業務を完結できるかを確認します。

自動化の範囲は、主に次の3段階に分かれます。

自動化の3段階

①一次受けのみ(用件を聞いて振り分ける)

②聞き取りまで(用件や連絡先を記録して有人に引き継ぐ)

③手続きの完了まで(予約や変更をAIだけで済ませる)

自動化したい業務を先に決め、その段階に届く製品かどうかを確認しましょう。

(2)導入前に試せるか(デモ・トライアル)

導入前のデモやトライアルは、AIの実力を見極める最も確実な方法です。
AIの聞き取り精度や応答の自然さは、各社が異なる条件で測った数値しか公開されていないため、カタログスペックで比較するのは簡単ではありません。

トライアル可能な場合は、現場のオペレーターにも触ってもらいながら以下の3点を確認しましょう。

トライアルで確認する3点
  • 聞き取りの精度
  • 音声の自然さ
  • 管理画面の操作性

(3)自社の業務に合わせられるか

機能がどれだけ豊富でも、自社の業務フローに合わせ込めなければ効果は限定される可能性があります。

確認するのは、以下の2点です。

業務に合わせられるかの確認ポイント
  • 応対シナリオや回答内容を自社の業務に合わせて調整できるか
  • いま使っているCTI・CRMなどの既存システムと連携できるか

連携の可否は契約後には変えにくいため、選定の段階で確かめておきます。

(4)導入後の運用体制とサポート

AIは導入して終わりではなく、運用しながら調整を続けることで効果が出るツールです。そのため、導入後にベンダーがどこまで伴走してくれるかを確認します。

具体的なポイントは、以下の3点です。

サポートの確認ポイント
  • 精度を上げるためのチューニングを支援してもらえるか
  • AIから人へ引き継ぐ条件の設計を手伝ってもらえるか
  • 入力したデータをAIの学習に使わせない設定・契約にできるか

(5)料金体系と課金の単位

料金は、課金の単位が自社の呼量に合っているかが重要です。

課金の単位は主に「1件あたり」「通話時間(分)あたり」「月額固定+席・ID数」(FAQ系では登録QA数)に分かれ、それぞれ向いている企業が異なります。

課金の単位向いている企業・窓口例
1件あたり(従量課金)呼量が少ない・変動する・事前に読めない企業。呼量が多く安定していると割高になりがち
通話時間(分)あたり1件の通話が短い窓口
月額固定+席・ID課金呼量が多く安定している企業

※具体的な費用相場は8章を参照してください。

次の10章では、この5軸を実際のサービスに当てはめて紹介します。

10.コールセンターAIサービス3選|5つの比較軸で解説

ここでは、9章で挙げた5つの比較軸を、実際のサービスに当てはめて紹介します。

取り上げるのは、シナリオ設計から運用まで作り込むカスタマイズ・伴走型、自分で設定してすぐ使い始めるセルフ導入型、構築をベンダーに任せる導入支援型という、タイプの異なる3サービスです。

比較軸カスタマイズ・伴走型セルフ導入型導入支援型
AnnVoice Agent(ストラーツ)IVRyAI Worker VoiceAgent(旧:AI Messenger Voicebot)
AIだけでどこまで完結できるか氏名・住所・日時・電話番号のヒアリング、商品名による対応の分岐、質問と関係のない発話への応答プッシュ分岐(IVR)+AI音声対話・音声認識Q&Aで一次対応を自動化自由発話からの用件特定、型番・氏名など文脈をふまえたヒアリング、FAQ回答
導入前に試せるか導入前検証を無料で実施(開発協力キャンペーン・社数限定)無料プランあり(月30件の着電まで0円)無償デモを依頼可能(要相談)
自社の業務に合わせられるかフルカスタマイズ。ノーコードシナリオ作成、API・SMS/LINE/メール連携管理画面から自社で設定(IVR分岐・Q&A)対話シナリオの作成・構築をベンダーが担当。外部システム連携可
導入後の運用体制とサポート専任エンジニアが伴走し、導入後もカスタマイズを継続セルフ運用(ヘルプセンターあり)導入時はリリースまで伴走し、テスト・チューニングを実施
料金体系と課金の単位要問い合わせ(個別見積もり)月額3,980円〜+従量利用料(2026年8月時点)要問い合わせ(公式サイトに掲載なし)

(1)AnnVoice Agent|カスタマイズ・伴走型

AnnVoice Agentは、株式会社ストラーツが提供するボイスボット型のコールセンターAIサービスです。

AnnVoice Agentの主な特徴は以下のとおりです。

AnnVoice Agentの主な特徴
  • 氏名・住所・希望日時・電話番号などを聞き取って記録できる
  • 商品名を聞き取り、商品ごとに異なる案内へ振り分けられる
  • 流れと関係ない質問(「営業時間は何時まで?」など)を挟まれても、答えてから元のヒアリングの流れに戻れる
  • 開発協力キャンペーンなら、課題の把握から導入前の検証までを無料で受けられる
  • ノーコードでシナリオを作成でき、API・SMS/LINE/メール連携までフルカスタマイズできる
  • 導入後も専任エンジニアが伴走し、シナリオ修正や設定変更を続けられる

料金は業務内容に応じた個別見積もりです。必要な機能と呼量に合わせて構成するため、使わない機能に費用を払う無駄がありません。自社に合った条件で複数社に見積もりを依頼して比較しましょう。

さらに、開発協力企業向けのフルカスタマイズ無料キャンペーンを実施中です(※基幹システム連携費用のみ発生します/※社数限定のため予定社数に達し次第受付終了の場合があります)。

既製のパッケージ型に業務を合わせるのではなく、自社の業務や既存システムに合わせて導入したい企業にもっともおすすめできるサービスです。

(2)IVRy|セルフ導入型

IVRy(アイブリー)は、株式会社IVRyが提供する電話自動応答サービスで、管理画面から自分で設定してすぐ使い始めるセルフ導入型です。

主な特徴は以下のとおりです。

IVRyの主な特徴
  • プッシュ分岐(IVR)に加え、AIの音声対話と音声認識Q&Aで一次対応を自動化できる
  • 月30件の着電まで使える無料プランがある
  • 分岐や応答は管理画面から自社で設定でき、すぐに変更できる
  • 運用も基本はセルフ(ヘルプセンターあり)

料金は月額3,980円からです(2026年8月時点。電話番号維持費・従量利用料が別途かかります)。呼量の少ない窓口や、小さく始めて効果を確かめたい企業に向いています。

ただし、シナリオの設計や精度の改善も自社で行うことになるため、調整のための担当者が必要になる場合が多いです。

(3)AI Worker VoiceAgent|導入支援型

AI Worker VoiceAgent(旧:AI Messenger Voicebot)は、株式会社AI Shiftが提供する電話対応AIエージェントです。

主な特徴は以下のとおりです。

AI Worker VoiceAgentの主な特徴
  • 「どうされましたか?」という自由な発話から用件を特定できる
  • 型番・氏名など、文脈をふまえたヒアリングまで自動化できる
  • 対話シナリオの作成やAIの構築はベンダー側が担当し、外部システム連携にも対応する
  • リリースまで伴走して設計し、テストとチューニングを経て公開する
  • 導入前に、現在の電話対応の内容をもとにした無償デモを依頼できる

料金は公式サイトに掲載がなく、要問い合わせです。導入実績は400社以上です。
シナリオ設計に社内の手間をかけられない、構築から任せたい企業に向いています。

11.コールセンターにAIを導入する進め方5ステップ

コールセンターにAIを導入する5ステップ(課題とKPI設定・選定とトライアル・データ準備と連携・テスト運用から本稼働・効果測定と改善)の図

ここでは、コールセンターにAIを導入する際の進め方を5つのステップで紹介します。

(1)STEP1:課題の洗い出しと目標(KPI)の設定

まずは、AIで解決したい課題の洗い出しと、達成度を測る目標(KPI)の設定をします。
「電話がつながらない」「後処理に時間がかかる」など自社の課題を具体的に挙げ、応答率や平均後処理時間といった測れる指標で目標を数値化します。

ここで決めたKPIが、効果測定の基準になります。

▼課題とKPIの例

課題例KPI例
電話がつながらない・あふれ呼が多い応答率
後処理に時間がかかる平均後処理時間(ACW)
同じ質問の電話が多い自己解決率・入電数(呼量)
新人がなかなか独り立ちできない平均応対時間・独り立ちまでの期間

さらに、課題から「AIに任せたい業務(必要な機能)」を、現状の記録から「呼量(月の入電件数)」を整理しておきます。この2つが、STEP2でサービスを絞り込み、見積もりを取るときの条件になります。

課題が曖昧なまま料金の安さでツールを選んで失敗するケースは珍しくありません。課題の洗い出しとKPIの設計は、自社に合ったサービスを選ぶための重要なステップです。

(2)STEP2:ツールの選定とトライアル・見積もり

STEP1で課題やKPIを整理したら、導入するAIツールの設定や改善を自社で運用する(セルフ型)か、外部に委託する(伴走・導入支援型)かを決めます。

方針が決まったら条件に沿って候補を絞り、導入前に必ずデモやトライアルで試します。見積もりは、STEP1で整理した呼量と必要な機能を各社に伝え、同じ条件で2〜3社に依頼して比較します。

見積もりの確認ポイントは次の通りです。

見積もりの確認ポイント
  • 総額で比べる(初期費用+月額+従量課金を、自社の呼量で試算する)
  • 連携開発やチューニングなど、料金表に載らない費用が見積もりに含まれているか確認する
  • 最低利用期間と解約の条件を確認する

(3)STEP3:データの準備と既存システムとの連携

導入するツールが決まったら、AIに読み込ませるデータの準備と、既存システムとの連携作業に入ります。
FAQ・マニュアル・トークスクリプトなどの社内データは、内容が古いままだとAIの回答精度に直結するため、この段階で整理・更新しておきます。

あわせて、CTI・CRMなど既存システムとの接続作業をベンダーと進めます。

(4)STEP4:テスト運用から本稼働

いきなり全業務に適用するのではなく、テスト運用を挟み、精度が安定したことを確認してから対象業務を広げて本稼働に移ります。

よくある問い合わせなど範囲を絞って小さく始め、実際の応対データで聞き取りや回答の精度、有人への転送が機能するかなどを確認しましょう。

例えばNTTドコモは、複数社のボイスボットを実証実験で比較するステップを踏んだ上で本格導入に進みました。その結果、月間10万件の入電で約8割の用件特定と約2割の自己解決を実現しています。(出典:月刊コールセンタージャパン)

(5)STEP5:効果測定と継続的な改善・運用体制の確保

本稼働の後は、STEP1で決めたKPIに対して効果を測定し、改善を続けます。

AI導入は稼働がゴールではなく、応対ログをもとに回答範囲やシナリオを調整し続けることで効果が積み上がっていきます。そのために、誰がログを確認し、誰がFAQやシナリオを更新するのかという運用体制をあらかじめ決めておくことが欠かせません。

自社での改善に不安がある場合は、伴走型サポートも選択肢になります。

ツール選定を含む、コールセンター立ち上げ全体の手順は以下の記事で解説しています。

12.コールセンターAIに関するよくある質問

コールセンターAIについて、よく検索されている質問に答えます。詳細は本文の各章で解説しているため、あわせて参照してください。

(1)AIの導入でコールセンターの仕事はなくなりますか?

A.コールセンターにAIを導入しても、クレーム対応や個別事情の判断など人にしかできない仕事は残ります。

AIの役割は、定型対応や後処理を引き受けて、オペレーターの判断が要る対応に集中できるようにすることです。

詳しくは6章(2)で解説しています。

(2)コールセンターAIにクレーム対応はできますか?

A.クレーム対応そのものをAIに任せることは、おすすめできません。

クレームは相手の感情を受け止めながら判断する仕事のため、人が対応する前提で設計します。AIに任せるのは、一次受けと要約を添えた引き継ぎまでが現実的です。

詳しくは6章(2)を参照してください。

(3)導入費用はどのくらいかかりますか?

A.金額は一律ではなく、導入するAIの種類と課金方式によって変わります。

1件あたり・分あたり・月額固定+席(ID)という課金方式の違いに加え、連携開発やチューニングなど料金表に載らない費用も総額に影響します。

種類別の費用相場は8章にまとめています。

(4)導入までにどのくらい期間が必要ですか?

A.必要な期間は、導入するAIの種類と適用する業務の範囲によって変わります。

いきなり業務全体で稼働させるのではなく、テスト運用で精度を確かめる期間を見込んでおく必要があります。

導入の進め方は11章で解説しています。

まとめ

コールセンターで使われるAIには8つの種類があり、生成AIとの組み合わせや既存システムとの連携で、応対前の準備から応対後の記録までの業務全体を変えられます。

メリットは大きい一方、誤回答やセキュリティなどの注意点もあるため、デモやトライアルで実際に試して選び、小さく始めて改善を続けることが、コールセンターAI導入を成功させる確実な進め方です。

検証費用を抑えて導入可否を判断したい場合は、株式会社ストラーツの「AnnVoice Agent」をご検討ください。社数限定の開発協力キャンペーンにより、課題把握からシナリオ設計、運用フロー提案、導入前検証までを無料で実施します。
また、導入後も専属エンジニアがシナリオ修正と精度改善を継続します。 

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監修

コールセンター業界で約18年の経験を持つ。現場での電話応対経験をはじめ、リーダーやSV(スーパーバイザー)として計7年間にわたり、現場管理・品質管理・教育などを幅広く担当。現在はインバウンドのカスタマーサポートに加え、通話音声をもとに応対品質を評価する音声チェック業務(QA)に従事している。現場の実務、マネジメント、品質評価の3つの視点に基づく実践的な助言を強みとしている。

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