変化の速いビジネス環境において、顧客接点の多様化(電話、メール、チャット、SNSなど)への対応と、応対品質の向上、そして業務効率化は、企業にとって喫緊の課題となっています。これらの課題解決につながるのが、最適なコンタクトセンターシステムの選定と導入です。
この記事では、コンタクトセンターシステムの基本的な定義から、比較検討に不可欠な主要機能、そしてオンプレミス型とクラウド型の違いなどを詳細に解説します。
1. コンタクトセンターシステムとは?基礎知識を解説

コンタクトセンターシステムの導入に際して、自社にあったシステム選定と導入が重要です。
ここでは、コンタクトセンターシステムの定義やその重要性などの基礎知識について解説します。
(1)コンタクトセンターシステムの定義
従来のコールセンターシステムが主に電話応対に特化していたのに対し、コンタクトセンターシステムは、デジタル化の進展に伴い多様化する顧客接点全体をカバーします。
このシステムは、顧客対応業務を効率化し、高品質なサービスを提供するための基盤となります。具体的には、以下のような目的で導入されます。
| 顧客満足度の向上 | 問い合わせチャネルの拡大や迅速な対応により、顧客体験を向上させます。 |
|---|---|
| オペレーター業務の効率化 | 複数のチャネルからの問い合わせをまとめて管理し、対応履歴を共有することで、オペレーターの負担を軽減します。 |
| データ分析によるサービス改善 | 問い合わせ内容や対応履歴を分析し、サービスの改善や新たな施策立案に役立てます。 |
このように、コンタクトセンターシステムは、現代の企業活動において、顧客との関係構築や業務効率化に不可欠なツールといえます。
(2)なぜコンタクトセンターシステムが必要なのか
コンタクトセンターシステムは、顧客満足度向上と業務効率化を実現するために不可欠です。具体的には、以下のような目的で導入されます。
| 顧客満足度の向上 | 迅速かつパーソナルな対応、多様なチャネルでの受付 |
|---|---|
| オペレーター業務の効率化・負担軽減 | 問い合わせ内容の自動振り分け、FAQ表示、顧客情報連携などによる対応時間短縮 |
| 応対品質の均一化・向上 | スクリプト表示、通話録音・分析、スーパーバイザーによるモニタリング |
| データ収集・分析によるサービス改善 | 問い合わせ傾向の把握、ボトルネックの特定、VOC(顧客の声)分析 |
2. コンタクトセンターシステムの主な機能

コンタクトセンターシステムの主要な機能としては、顧客情報を管理しスムーズな対応を支援するCRM、電話とコンピューターを連携させるCTI、着信を効率的に振り分けるACD、自動音声で一次対応を行うIVRなどが挙げられます。
ここでは、コンタクトセンターシステムの主な機能を解説します。
(1)基本機能
コンタクトセンターシステムには、顧客からの電話を効率的に処理し、オペレーターの業務をサポートするための様々な基本機能が備わっています。主な機能としては、以下のようなものがあります。
| 着信呼自動分配(ACD) | 入電をあらかじめ設定したルールに基づいて最適なオペレーターに振り分ける機能です。スキルや待ち時間などを考慮したルーティングが可能です。 |
|---|---|
| IVR(自動音声応答) | 自動音声によるガイダンスで、顧客からの問い合わせ内容を事前に聞き取り、適切な窓口へ誘導する機能です。 |
| CTI(電話とPC連携) | 電話とコンピューターシステムを連携させ、着信時に顧客情報を画面に表示したり、PC画面からのクリックで発信したりできます。 |
| 通話録音 | 顧客との通話内容を録音する機能です。聞き漏らしの確認や、オペレーターの対応品質向上、応対履歴の確認などに役立ちます。 |
| レポート・分析機能 | 応対履歴や稼働状況、待ち呼数などのデータを収集し、集計・分析することで、コンタクトセンター運営の改善に活用できます。 |
また、これらの機能を効果的に活用することで、オペレーターの負担を軽減し、より質の高い顧客対応を実現することができます。システムの選定にあたっては、自社の現状と将来的な展望を踏まえ、必要な機能を備えているか慎重に検討することが重要です。
(2)高度な機能 / 付加機能
コンタクトセンターシステムには、基本機能に加え、顧客満足度向上や業務効率化をさらに進めるための高度な機能や付加機能が多数あります。
| AIチャットボット | 24時間365日稼働し、簡単な質問に自動で回答。オペレーター負担軽減、迅速な対応を実現します。 |
|---|---|
| 通話録音 | 通話内容を録音・保存。品質管理、教育、トラブル発生時の証拠として活用できます。 |
これら以外にも、顧客情報の一元管理や応対履歴の確認を可能にするCRM連携、よくある質問への自動応答を強化するFAQシステム連携、電話以外のチャネル(チャット・メール・SMS)との連携機能、AIによる感情分析や通話要約など、様々な機能が提供されています。
これらの機能を活用することで、顧客接点の多様化に対応し、よりパーソナライズされた高品質なサービス提供が可能になります。また、オペレーターのスキルや状況に合わせた最適な振り分けを行うWFM(ワークフォースマネジメント)機能も、効率的なセンター運営に不可欠です。
3.コンタクトセンターシステムの種類|オンプレミス型とクラウド型の違い

オンプレミス型は、自社内にサーバーや機器を設置してシステムを構築・運用する方式であり、カスタマイズ性が高く、自社のセキュリティポリシーに沿って設計できる点が特徴です。
これに対してクラウド型は、ベンダーが提供するシステムをインターネット経由で利用する方式です。初期費用を抑えて短期間で導入できるほか、運用・保守をベンダーが担うため、自社の負担を軽減できます。
それぞれの違いは以下の表でご確認いただけます。
| オンプレミス型 | クラウド型 | |
|---|---|---|
| 費用 | 初期費用高、ランニング費用(運用) | 初期費用安、月額利用料 |
| 導入期間 | 長期間 | 短期間 |
| 運用負担 | 大 | 小 |
| 拡張性 | 機器依存、追加投資必要 | 柔軟、スケーラブル |
両者の特性を踏まえると、自社の規模・運用体制・セキュリティ要件に応じて最適な方式を選択することが重要です。拠点の分散やリモートワークの拡大が進む現在では、柔軟性に優れたクラウド型のニーズが一層高まっています。
4. クラウド型コンタクトセンターシステム導入のメリット・デメリット

ここでは、クラウド型コンタクトセンターシステムの導入におけるメリットとデメリットをより詳しく解説します。
(1)クラウド型のメリット
クラウド型コンタクトセンターシステムは、初期投資を抑えながら柔軟に拡張できます。以下に主要なメリットをまとめました。
| コスト効率(CAPEXからOPEXへ) | 財務負担の平準化と予算管理の柔軟化を実現。資金を他の戦略投資に振り分け可能。 |
|---|---|
| 事業継続性(BCP対策) | 拠点停止リスクを最小化し、顧客対応を止めずに事業を継続可能。 |
| 新技術の迅速導入(AI・CRM連携など) | 顧客満足度の向上と業務効率化をスピーディーに実現。競争優位性の確保にも寄与。 |
| リモートワーク・多拠点展開対応 | 人材活用の幅が広がり、採用・シフト運用の柔軟性を高める。 |
クラウド型コンタクトセンターシステムなら拠点停止リスクを最小化し、災害があっても顧客対応を止めずに事業を継続可能です。また、人材活用の幅が広がり、採用・シフト運用の柔軟性を高めることも可能となります。
(2)クラウド型のデメリット
クラウド型システムは導入・運用の手軽さが魅力である一方、利用環境やベンダーに依存するリスクも存在します。企業担当者は、導入前に自社のセキュリティ基準や運用体制に照らして慎重に検討することが重要です。
| 懸念点 | 留意点 |
|---|---|
| インターネット接続への依存 | 冗長回線の確保やVPN経由の接続など、 ネットワーク面でのBCP対策を検討。 |
| ベンダー依存・サービス停止リスク | 信頼性の高いベンダー選定と、 SLA(サービス品質保証)の確認が不可欠。 |
| 既存システムとの連携課題 | 導入前に連携要件を洗い出し、 PoC(検証環境)で動作確認を行う。 |
| セキュリティポリシーの適合性 | ベンダーのセキュリティ認証(ISO27001、SOC2等) を確認し、自社基準との整合を図る。 |
導入前のベンダー比較・SLA確認・セキュリティ審査を徹底することで、安定運用とリスク低減の両立が可能です。
5. コンタクトセンターシステム導入の流れと注意点

コンタクトセンターシステムを導入する際は、計画的に進めることが重要です。主な導入ステップは以下の通りです。
- ステップ1:導入目的と要件を明確にする
- ステップ2:システムを選定する(ベンダー比較検討)
- ステップ3:設計・構築(クラウド型は設定が主)
- ステップ4:導入前のトレーニングを行う
- ステップ5:テスト・運用開始
なおクラウド型の場合は、ハードウェア設置などが不要なため、比較的短期間での導入が可能です。
6. まとめ
コンタクトセンターシステムは、企業が顧客との接点を多様化させ、より質の高いサービスを提供するための重要な基盤です。
導入にあたっては、目的や要件を明確にしたうえで、信頼できるベンダーを選定し、自社の運用体制やセキュリティ基準に適合しているかを慎重に確認することが欠かせません。
社の規模や業態に合ったシステムを選定し、継続的な改善を重ねることで、顧客との信頼関係を強化し、競争力の高い組織づくりへとつなげていきましょう。



