応対品質は顧客満足度や再利用意向などに大きく影響します。
企業が競争力を高めるためには、オペレーターの対応力を均一化し、継続的に品質を改善していく体制が欠かせません。
この記事では、コールセンターの応対品質を向上させる方法を中心に応対品質を評価する方法なども解説します。
1.コールセンターの応対品質とは

コールセンターにおける応対品質は、通話のつながりやすさやオペレーターの対応速度など、技術的支援と人的要素の両面からの取り組みが重要です。
ここでは、コールセンターにおける品質管理の評価項目や応対品質が重要な理由を解説します。
(1)コールセンターにおける品質管理の評価項目
コールセンターにおける品質管理の評価項目は、応対品質・接続品質・処理品質の大きく3つに分けられます。
これらの評価項目が総合的に優れることで、高品質なサービス対応を実現できます。
①応対品質
応対品質とは、オペレーターが顧客とどのようにコミュニケーションを取っているかを評価することを指します。
言葉遣いが丁寧かどうかだけではなく、相手に安心感や信頼感を与えられるかといった印象面までを含みます。
| 敬語の正確さ | 適切な敬語表現ができているか |
|---|---|
| 声のトーン | 聞き取りやすく、落ち着いた声であるか |
| 話すスピード | 速すぎず遅すぎない適切なペースか |
| 共感的な対応姿勢 | 相手の気持ちに寄り添う姿勢があるか |
コールセンターでの対応には、顧客の話に丁寧に耳を傾け、わかりやすく正確な情報を伝えることが求められます。
顧客満足度やクレーム発生率に直結するため、評価項目を細分化し、継続的な教育とフィードバックを実施することが重要です。
②接続品質
接続品質とは、顧客がコールセンターに電話をかけた際に、スムーズに通話が開始できるかを評価する指標です。
この段階で、顧客がストレスを感じれば、それだけで企業に対する印象が悪化します。
| 待機時間 | オペレーターにつながるまでの所要時間 |
|---|---|
| 呼び出し回数 | 顧客が呼び出し音を何回聞かされたか |
| 通話の安定性 | 通信が途切れたりノイズが発生したりしないか |
適切な担当部署に素早く転送されるかどうかも接続品質に含まれる重要な要素です。
③処理品質
処理品質とは、顧客の問い合わせに対して、いかに的確かつ迅速に対応できたかを測る指標です。
答えを返すだけでなく、問題の本質を正しく把握し、顧客が納得できる形で解決に導けているかどうかを判断します。
処理品質は以下のような3項目で評価します。
| 内容の正確さ | 顧客の意図を正確に汲んでいる |
|---|---|
| 回答までのスピード | 迅速に返答できている |
| 対応完了までの一貫性 | 途中で対応者が変わっても情報が引き継がれている |
顧客が複数回問い合わせを要さない「一回完結率」が高ければ処理品質の高さを維持していると判断できます。
(2)コールセンターの応対品質が重要な理由
顧客対応の場面が企業の印象を左右するなかで、コールセンターの応対品質は経営戦略上の要所です。
購入や契約後の疑問・不安を抱えた顧客が最初に接するのがコールセンターであるため、そこでの対応が良質であれば、企業への信頼や満足度が高まります。
逆に対応に不備があれば、一度のやりとりで信頼を損ない、離脱や悪評につながる可能性もあります。
応対品質の高さはクレームの抑止や業務の再発防止にも寄与し、長期的にはコスト削減や生産性の向上も可能です。
現状の課題解決が難しい場合にはシステムなどを活用し、業務効率化を図ることも有効です。
2.コールセンターの応対品質を評価する方法

コールセンターの応対品質を向上させるためには、現状の対応レベルを正確に把握し、課題を可視化する評価方法の整備が欠かせません。
評価方法にはいくつかの手段があり、それぞれ異なる視点から品質を分析できます。
以下ではコールセンターの応対品質を評価する方法について解説します。
(1)チェックシートの活用
チェックシートは、応対品質を客観的かつ一貫性を持って評価するための基本的な方法です。
以下のような項目で自社独自のチェックシートを作成することで、評価の客観性と一貫性を保ちながら、組織全体の応対レベルを高めることができます。
| 評価項目の明確化 | 「第一声の印象」「言葉遣い」「説明の正確さ」など、具体的な評価基準を設定する |
|---|---|
| スコアリングの仕組み | 各項目に点数をつけ、数値で応対の質を可視化する |
| 複数評価者による確認 | 主観的な偏りを避けるため、複数人で評価し、ばらつきを防ぐ |
| フィードバックの実施 | チェック結果をもとにオペレーターへ改善点を伝え、次回対応に活かす |
| 教育・研修への活用 | 集まった評価データをもとに、全体研修や個別指導に反映させる |
これらの取り組みを日常的に確認することで、チェックシートは単なる評価ツールにとどまらず、組織全体の品質管理と育成施策を支える中核的な役割を果たします。
(2)モニタリング
モニタリングは、オペレーターの実際の応対をリアルタイムまたは録音・録画で確認し、対応内容を詳細に評価する方法です。
管理者が顧客とのやり取りを直接観察することで、声のトーン、話し方、応対姿勢などを評価できます。
モニタリングを通じて得られた気づきは、オペレーター本人へのフィードバックに活用でき、応対品質の底上げにつながります。
(3)ミステリーコール
ミステリーコールは、評価者が一般の顧客を装い、実際にコールセンターへ電話をかけることで応対品質を測定する方法です。
オペレーターが評価されていることを意識しないため、日常的な対応の質をありのままに把握できる点が特長です。
顧客視点での評価が可能なため、CS(顧客満足)の観点から改善すべきポイントを抽出しやすくなります。
案内のわかりやすさ、共感的な態度、待ち時間の長さなど、実体験にもとづいたフィードバックを得られることが大きなメリットです。
評価結果はオペレーターの育成に活かすだけでなく、スクリプトや業務フローの見直しにも役立ちます。
3.コールセンターの応対品質を向上させる方法

コールセンターの応対品質を向上させるには、組織全体で一定の基準を設け、それに基づいた継続的な取り組みを行うことが重要です。
ここでは、コールセンターの応対品質を向上させる方法を具体的に解説します。
(1)マニュアルの整備
マニュアルには基本的なフローだけでなく、適切な言い回しの例やNGワード、顧客の疑問に迅速に答えられるFAQへの導線など、実務に即した内容でなければなりません。以下にマニュアルに整備すべき主な内容をまとめています。
| マニュアルの項目 | 具体的な整備方法 |
|---|---|
| 基本的な応対フロー | 着信・応答から終話の流れを明記 |
| 適切な言い回しの例 | 具体的なトークスクリプトを作成 |
| NGワードの共有 | NGワードのリストアップ |
マニュアルの更新後は全オペレーターに周知し、必要に応じて研修やテストを実施することで、内容の理解と定着を図ることができます。
(2)モチベーション維持の施策
定期的な面談やフィードバックの実施、成果に応じたインセンティブ制度、社内表彰といった施策を講じることで、オペレーターの定着率向上などが期待できます。
研修などで目標管理やスキルアップの機会を設けることも効果的です。
上司やチーム内での感謝や承認の文化も、労働環境の改善に寄与します。
(3)品質管理担当者を決める
応対品質を組織的に維持・向上させるには、以下のような業務を担当できる専任の品質管理担当者を設けることが効果的です。
| 品質管理担当者の主な業務内容 | ・品質評価・フィードバック・マニュアル更新・教育計画の立案 |
|---|
品質管理担当者は評価基準を明確にし、定量的なデータと現場のフィードバックをもとにPDCAを回すことが重要です。
責任の所在を明確にすることで、応対品質向上への取り組みがより実効性を持ちます。
(4)オペレーター研修を実施
オペレーターの応対品質を安定させるには、以下のような段階に応じた研修の実施が不可欠です。
| 新人研修 | ・電話応対やマナー・商品知識・システム操作の習得を目的としたカリキュラム |
|---|---|
| 中堅・ベテラン層 | ・より高度な応対スキルやクレーム対応・感情労働へのケア・現場に即した内容の研修 |
研修内容は一方的な座学にとどめず、ロールプレイングや録音を活用した実践的なトレーニングを取り入れることで、スキルの定着を促せます。
定期的な評価と連動した研修を継続的に行うことで、オペレーター全体の品質を底上げできます。
(5)定期的なモニタリング
モニタリングでリアルタイムで通話を確認することで、その場でのサポートやフォローが可能になり、品質の即時是正にもつながります。
録音や文字起こしシステムを活用することで、客観的な記録に基づいた評価が可能となり、定期的なモニタリングで公平な評価と納得感のあるフィードバックを実現できます。
以下のような方法で実施することで、客観的な記録に基づいた評価や品質の是正などを行うことができます。
| 内容 | 定期的なモニタリングの実施方法 |
|---|---|
| モニタリングの頻度設定 | 実施スケジュールを定期化 |
| 評価対象の選定 | 通話をランダムまたは重点抽出 |
| モニタリング方法 | 通話をリアルタイムまたは録音で確認 |
| 評価基準の設定 | チェック項目を事前に統一 |
| フィードバックの実施 | 結果を個別に伝え改善指導 |
定期的なモニタリングは応対品質の底上げだけでなく、オペレーターとの信頼関係構築や業務効率の向上にも寄与します。
以下ではより具体的に定期的なモニタリングの実施方法を解説します。
①リアルタイムで通話内容を聞く
通話中のオペレーターの対応をリアルタイムで確認できるため、現場で起きている問題を即座に把握できます。
顧客の質問に対して詰まる場面や、言い回しに迷いがある際に即時フォローも可能です。
ただし評価内容は必ずフィードバックとセットにし、信頼関係を損なわないよう留意する必要があります。
②システムの活用
録音・録画機能や通話の文字起こし機能を備えたシステムを導入すれば、通話内容に関するデータの可視化が進み、評価・分析の精度が向上します。属人的な評価ではなく、数値をもとにした評価が可能となります。
たとえば、AIによるキーワード抽出や感情分析を取り入れることで、マニュアルでは拾いきれない潜在的な課題も洗い出せます。
過去の優良応対事例を共有できる仕組みを導入することで、教育コンテンツとしても活用可能です。
4.コールセンターの応対品質向上におすすめのシステム
(1)Cloud CTI&AI

Cloud CTI&AIは、クラウド型CTIと最先端のAI技術を融合させ、顧客対応のスピードと正確性を両立させながら、応対品質や業務効率の大幅な改善を実現します。
導入企業の業種や業務プロセスに応じて、専門の技術スタッフがフルカスタマイズを行うため、個別課題にも柔軟に対応でき、自社固有のニーズにフィットした環境を構築可能です。
AIによる高精度な自動応答、感情や会話内容をリアルタイムで分析する機能、問い合わせ内容に応じた自動振り分けなど、品質管理とオペレーター支援を同時に強化できる機能が標準搭載されています。
これにより、対応のばらつきを抑え、顧客満足度を安定的に高水準で維持することが可能です。
システム利用料以外の追加開発費やサポート費用が不要なため、支援システムを初めて導入する場合にも活用できます。
| 料金 | こちらからお問い合わせできます |
|---|---|
| 機能 | ・フルカスタマイズ対応 ・独自AIによる自動応答機能 ・コストパフォーマンスに優れた透明な料金体系 |
| 所在地 | 東京都港区南青山3-8-40青山センタービル2F |
| 運営会社 | 株式会社ストラーツ |
| 詳細 | 株式会社ストラーツ(公式HP) |
(2)COTOHA Voice Insight

COTOHA Voice Insightは、NTTコミュニケーションズが提供する音声解析AIサービスであり、コールセンターにおける応対品質の可視化と改善を支援します。
顧客とオペレーターの通話内容をリアルタイムで解析し、感情や会話の内容を数値として可視化する機能を備えています。
個々の対応が適切だったかどうかを客観的に評価できるため、評価基準の均一化と応対スキルの底上げが可能です。
解析結果に基づくフィードバックを提供できるため、研修やマニュアル作成にも活用でき、継続的な品質向上につなげることができます。
| 料金 | お問い合わせでご確認ください |
|---|---|
| 機能 | ・顧客情報表示機能 ・応対履歴共有機能 ・通話録音機能 |
| 所在地 | 東京都千代田区大手町2-3-1 大手町プレイスウエストタワー |
| 運営会社 | エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 |
| 詳細 | 公式HP |
(3)Service Cloud

Service Cloudは、顧客情報を一元管理し、オペレーターが過去の履歴や問い合わせ内容を即座に把握することが可能です。
AI機能を活用して問い合わせ内容を自動分類したり、最適な回答を提示したりする機能もあり、オペレーターの負担軽減とスキル差の平準化にもつながります。
複数チャネルからの問い合わせを統合して管理できるため、顧客対応の一貫性も保たれます。
| 料金 | お問い合わせでご確認ください |
|---|---|
| 機能 | ・オムニチャネル対応機能 ・AI活用による自動化機能(Einstein) ・クラウドテレフォニー連携機能(Service Cloud Voice) |
| 所在地 | 東京都千代田区丸の内1-1-3 日本生命丸の内ガーデンタワー (Salesforce Tower) |
| 運営会社 | Salesforce(セールスフォース) |
| 詳細 | 公式HP |
5.コールセンターの応対品質向上向けシステムの選び方

どれだけ優れたオペレーターが揃っていても、仕組みや環境が整っていなければその力は十分に発揮されません。
高機能なシステムほど魅力的に映りますが、機能の過不足があると効率が下がる場合もあります。
費用対効果・データの活用・音声技術の実用性といった観点から総合的に判断し、目的に合った最適なシステムを選定する方法を解説します。
(1)費用は予算内か
まず導入費用とランニングコストが、自社の予算内に収まるかどうかを慎重に検討する必要があります。
初期費用や月額利用料だけでなく、機能の追加・カスタマイズ・サポート対応などで思わぬコストがかかるケースも少なくありません。
高機能なシステムほど魅力的に見えますが、実際の運用において使いこなせない機能が多ければ、費用対効果は著しく低下します。
必要な機能に絞られているか、追加開発費や保守費が明確かといった点まで、導入前に確認しておくことが重要です。
(2)データ分析機能
応対品質を継続的に改善するためには、データ分析機能の有無が重要です。
顧客との会話内容や通話時間、保留回数など、定量的な情報を蓄積・可視化できるシステムを選定することで、改善点を客観的に把握することが可能になります。
顧客満足度やオペレーターごとの対応傾向を見える化できれば、個別の指導や研修にも役立てられます。
システムの選定時には、以下のような分析機能が搭載されているかどうかを確認しましょう。
| 分析機能 | 活用目的・効果 |
|---|---|
| 通話時間の分析 | ・応対効率を可視化できる ・業務負荷の偏りを把握できる ・不要な長話や非効率な対応を特定できる |
| 一次完結率(First Call Resolution)の分析 | ・応対の質を数値で測れる ・顧客満足度との相関が高い ・再コールの原因分析が可能 |
| キーワード抽出・感情分析 | ・顧客の本音やニーズを自動で収集できる ・クレームや課題の傾向を早期に発見できる ・応対品質のばらつきを定量的に把握できる |
定期的な分析に基づき、数値で応対品質を評価・改善する体制を構築することが、長期的な品質向上には不可欠です。
(3)音声認識の精度
コールセンターシステムの選定時にはその精度が業務に支障をきたさないレベルであるかを確認することが重要です。
音声認識の精度が低いシステムを導入した場合、会話の誤認識などでかえって応対品質の管理が複雑化する恐れがあります。
専門用語や固有名詞を多く含む業界では、辞書登録やカスタマイズが可能なシステムを選ぶことで、誤認識を最小限に抑え正確な文字起こしやデータ分析が可能です。
6.まとめ
コールセンターの応対品質を向上させるためには、明確な評価指標の導入と現場に根差した改善活動が不可欠です。
マニュアルの整備や研修体制の構築といった基本的な取り組みに加え、AIやクラウド技術を活用したシステムの導入も、大きな効果を発揮します。
システム選定においては、自社の課題に合致する機能と費用対効果を見極めましょう。



