コールセンターにおけるエフォーレス体験とは?概要やポイントを解説

近年、コールセンター運営において注目されているのが、エフォートレス体験の提供です。
顧客がコールセンターへ問い合わせをする際に感じる手間やストレスは、顧客満足度を大きく左右する要因となります。

本記事では、エフォートレス体験の概要から重要性顧客ニーズに応えるためのポイントまで詳しく解説します。

目次

1.エフォートレスの概要

まずはエフォートレスの概要について、以下のポイントで解説します。

(1)エフォートレスとは?

エフォートレス(effortless)とは、「労力が不要な」「簡単な」という意味を持つ言葉です。
ビジネスの文脈では、顧客が商品やサービスを利用する際に感じる手間や労力、ストレスを最小限に抑えることを指します。

コールセンターにおけるエフォートレス体験とは、顧客が抱える問題をスムーズに解決することです。
顧客は問い合わせや購入プロセスで手間を感じた瞬間にネガティブな印象を持ちます。

問い合わせ窓口が見つけやすい、待ち時間が短い、必要最小限の手順で解決できるなど、顧客が「簡単だった」と感じる体験を提供することが重要です。

(2)コールセンターにおけるエフォートの種類

コールセンターにおけるエフォートの種類は以下の4種類です。

①商品やサービスの利用方法がわかりにくい

顧客が直面するエフォートの例として、商品やサービス自体の複雑さがあります。
直感的に理解できない操作手順や複雑な機能は、顧客に大きな負担をかけるでしょう。

商品やサービス自体が複雑な場合、顧客は取扱説明書を何度も読み返したりオンラインで解決策を探したりと、サービスを利用する以前に多くの時間と労力を費やすことになります。

コールセンターに問い合わせても、説明が技術的すぎたり、一度の説明では全容を把握できなかったりした場合は、同じ内容について繰り返し問い合わせることになるでしょう。

手順や機能を理解するための努力は顧客にとってのストレス源となり、「この商品は使いにくい」というネガティブな印象を与えます。結果として、商品への満足度低下や解約・返品につながるリスクも高まるでしょう。

②問い合わせの方法が限られている

顧客コミュニケーションの多様化が進む中、問い合わせの選択肢が少ないと無駄な労力を生み出します。人によって情報の受け取り方や状況は異なります。

たとえば、通勤中の電車内では電話での会話が難しいため、テキストベースが最適です。一方で、複雑な問題の場合は口頭でのやり取りが効率的な場合もあるでしょう。また、高齢者はデジタルよりも電話での対応を好む傾向があります。

企業が提供する問い合わせチャネルの数が限られていると、顧客は自分にあわない方法で問い合わせる必要があります。「本当は文章で残しておきたいのに電話しかない」「今すぐ解決したいのにメールで数日待たされる」といった状況は、顧客に大きなストレスを与えるでしょう。

問い合わせ方法を選択できない不自由さは、「顧客の都合を考えていない」というネガティブな印象につながり、顧客満足度の低下を招きます。

③問い合わせた部門から別の部門へ転送される

部門間の転送問題も、顧客に負担をかける原因の1つです。
わざわざコールセンターに問い合わせても、最初の窓口で解決しない場合は、別の部門に転送される場合があります。

転送することによって、顧客は数分間の保留を強いられるだけでなく、転送先の担当者に対して同じ説明を最初からやり直す必要があるため面倒です。さらに、1回で解決しない場合は2回目の転送、3回目の転送と続くこともあるでしょう。

たらい回しの状況は顧客の貴重な時間を奪うだけでなく、「なぜ最初から適切な部署につないでくれないのか」といった不満につながり、企業への信頼を損なう要因となります。

④FAQやIVRがわかりにくい

顧客の自己解決を助けるはずのFAQやIVR(自動音声応答システム)ですが、内容がわかりにくい場合は、逆に新たな障壁となってしまうケースがあります。

たとえば、業界用語や専門的な表現で書かれているFAQは、一般の顧客にとって理解しにくいものとなります。
顧客は意味を理解するために調べ物をしたり、何度も読み返したりする余計な労力を強いられるでしょう。

同様にIVRも「1を押すと〇〇、2を押すと××…」といった選択が長々と続いた場合、自分の問題にあった番号を見つけるまでに長い時間を要することがあります。FAQIVRが使いにくければ、顧客は結局コールセンターへ電話することになり、二度手間が発生します。

本来負担軽減のためのツールが、新たなストレス源となる皮肉な状況が生まれるのです。

2.コールセンターにおいてエフォートレス体験が重要な理由

エフォートレス体験を提供することは、コールセンターにおいて重要な施策とされています。
ここでは、エフォートレス体験が重要視される理由を4つ紹介します。

  • 他社との差別化
  • ロイヤルカスタマーの獲得
  • 新規顧客の獲得・囲い込み
  • 顧客努力指標(CES)

順に見ていきましょう。

(1)他社との差別化

他社との差別化要因として注目されているのがエフォートレス体験です。顧客は単によい商品を求めているだけでなく、利用プロセス全体がスムーズであることを望んでいます。

コールセンターなど顧客との接点において、「手間なく問題が解決できる」「すぐに必要な情報にアクセスできる」といった体験は、競争優位性を高める要因となるでしょう。

とくに、機能や価格で差がつけられない商品・サービスでは、エフォートレス体験の質が購入の決め手となることも少なくありません。競争が激化する市場では、製品やサービス自体の差別化が年々難しくなっています。

(2)ロイヤルカスタマーの獲得

ロイヤルカスタマーとは、特定の商品やブランドに継続的な愛着を持ち、長期にわたって利用し続ける顧客のことです。エフォートレス体験の提供によって、ロイヤルカスタマーの獲得につながります。

企業にとって、ロイヤルカスタマーの存在は安定的な収益基盤となるだけでなく、口コミによる宣伝効果ももたらします。しかし、真のロイヤルカスタマーを育成するには、よい商品を提供するだけでは不十分です。

価格や機能だけで選ばれている場合、競合他社がより魅力的な条件を提示すれば、顧客は簡単に流出してしまうでしょう。エフォートレス体験では、顧客が問題に直面したとき、簡単かつスピーディーに解決策を提供できるため、「私のことを大切にしてくれている」という感覚が生まれます。

結果として、価格競争に左右されない、本質的な顧客ロイヤルティの向上につながるでしょう。

(3)新規顧客の獲得・囲い込み

エフォートレス体験を提供した結果、新たな顧客の獲得と囲い込みにつながるケースもあります。
公式サイトやカタログでは得られない具体的な情報や個別の懸念事項について、コールセンターへ直接問い合わせることで購入の意思を固める顧客もいます。

このようなファーストコンタクトでの体験が、その後の顧客関係を大きく左右するでしょう。
問い合わせの際にスムーズでわかりやすい対応を受けた顧客は、「購入後も安心してサポートが受けられそうだ」という信頼感を抱き、購入に踏み切る可能性が高まります。

一方初回の問い合わせで複雑な手続きや長い待ち時間、曖昧な回答をされた顧客は、購入前に不信感を抱き、競合他社へと流れてしまう恐れがあります。

コールセンターでのエフォートレス体験は、潜在顧客を実際の購入者へと変える獲得と、その後も継続的に利用してもらう囲い込みの両方に貢献する重要な要素です。

(4)顧客努力指標(CES)

CES(Customer Effort Score)は、顧客が目的達成のためにどれだけの労力を費やしたかを定量的に測定する指標です。顧客満足度をはかる従来の指標とは異なり、「どれだけ簡単だったか」という観点から顧客体験を評価します。

多くの顧客は「優れたサービス・商品の購入」よりも「労力の少なさ」に満足感を覚えるとされています。
つまり、特別な体験よりも「簡単で手間がかからないこと」の方が顧客ロイヤルティに直結しやすいのです。

このことから、エフォートレス体験の実現は単なる顧客サービス向上策ではなく、ビジネス成果に直結する重要な経営戦略と位置付けられるようになっています。

3.エフォートレス体験で顧客のニーズに応えるためのポイント

エフォートレス体験を通して、顧客のニーズに応えるためには何を実践すればよいのでしょうか?

ここでは、顧客のニーズに応えるためのポイントを5つ紹介します。

  • 自己解決を促すためFAQを整える
  • VOC分析を導入する
  • 音声案内のビジュアル化
  • 顧客接点チャネルの見直し
  • カスタマージャーニーマップの活用

1つずつ紹介していきます。

(1)自己解決を促すためFAQを整える

顧客が自ら問題を解決できる環境を整備することは、エフォートレス体験の基盤となります。とくに効果的なのは、充実したFAQの提供です。

質問は簡単な言葉で、回答は具体的かつ簡潔に、必要に応じて画像や動画を活用することで理解を促進できるでしょう。また、検索機能やカテゴリ分類を組み込み、顧客が必要な情報にすばやくたどり着ける工夫も重要です。

FAQを充実させることで、顧客が電話やメールで問い合わせる時間と労力を省けるだけでなく、24時間いつでも解決策を得られるという安心感を提供します。

結果として、問い合わせ数の削減と顧客満足度の向上という二重の効果をもたらすでしょう。

(2)VOC分析を導入する

VOC(Voice of Customer)分析の導入は、エフォートレス体験の実現に向けた重要なポイントです。
顧客からの問い合わせ内容やクレーム、要望など、生の声を収集・分析することで、顧客が現在直面している手間や障壁を具体的に把握できます。

VOC分析では、電話・メール・チャット・SNS・アンケートなど複数のチャネルから集まるデータを統合することで、傾向やパターンを抽出します。

その結果、「どの段階で」「どのような」エフォートが発生しているかを明確にすることが可能です。

たとえば、「説明書がわかりにくい」というVOCが多数寄せられていれば、FAQ改善チュートリアル動画の作成といった具体的な対策につなげられます。
また、「電話がつながりにくい」というVOCであれば、チャットサポートの拡大といった施策が検討できるでしょう。

(3)音声案内のビジュアル化

音声案内のビジュアル化は、顧客のエフォートレス体験を促進させる施策です。
今までの自動音声応答システムは、音声案内によって窓口を切り分けていました。

何回もボタンを押す必要があったり、ガイダンスを聞き終えるまでボタンを押せなかったりと、多くの顧客にとってストレスの原因となっていたのです。この課題を解決するのが「音声案内のビジュアル化」です。

ビジュアル化では、今まで音声案内で切り分けされていた部分をWebサイト上で切り分けます
顧客はタップ操作で必要な選択肢を選べるため、音声ガイダンスが終わるのを待つ必要もありません。

ビジュアル化によって顧客の待ち時間とストレスが軽減されるだけでなく、問題解決までの時間も短縮されるため、顧客と企業双方にメリットが生まれるでしょう。

(4)顧客接点チャネルの見直し

現代の顧客は状況や好みに応じてさまざまなチャネルを求めています。
多様なニーズに応えるため、企業は複数のコミュニケーションチャネルを整備して、顧客が自分に最適な方法で問い合わせできる環境を整えることが重要です。

たとえば、緊急の問題解決には電話が適している一方、移動中や公共の場では周囲に会話を聞かれたくないためチャットやメールが好まれます。

また、深夜に問題が発生した場合はセルフサービスのFAQや24時間対応のチャットボットが重宝されるでしょう。

重要なのは単にチャネルを増やすだけでなく、それぞれのチャネル間でスムーズな連携ができる点です。

多様なチャネルの適切な組み合わせにより、顧客は自分の状況にあわせた最適な方法で企業とコミュニケーションがとれるため、ストレスを軽減できるでしょう。

(5)カスタマージャーニーマップの活用

カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品やサービスを認知してから購入、利用、そして継続・解約に至るまでのプロセスを可視化するツールです。

この手法を活用することで、顧客体験の全体像が可視化されるため、どの段階で顧客が手間や障壁を感じているかを特定できます。

また、カスタマージャーニーマップを通じて体験全体を見直すことで、部門間の連携が促進されるため、社員の「自分の担当範囲だけよければいい」という思考を改善する効果もあります。

4.まとめ」

ここまで、エフォートレスの概要やエフォートレス体験が重要視される理由、ニーズに応えるためのポイントを解説しました。コールセンターにおけるエフォートレス体験は、顧客満足度向上と企業の競争力強化に大きく貢献します。

エフォートレス体験の実現を支援するツールである「Cloud CTI&AI」では、独自のAI技術によりコールセンターでの顧客対応を自動化することで、オペレーターの負担を軽減します。また、コールセンターのニーズにあわせて柔軟にカスタマイズすることも可能です。

業務支援ツールの導入も検討したうえで、顧客満足度が上がるような対応を実践していきましょう。

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