コールセンターに寄せられるVOC(顧客の声)を体系的に分析することで、問い合わせ件数の削減やオペレーター対応品質の向上など、具体的な業務改善につなげることができます。
本記事では、VOC分析の基本的な概念から実施手順、活用できるシステム・ツール、業務改善への活用事例を解説します。
株式会社ストラーツの「電話応対AIサービス」は、AIによる一次対応の自動化に加え、通話内容の文字起こし・要約・感情分析・自動振り分けに対応しており、コールセンターに蓄積される会話データをVOC分析に活用できます。問い合わせ内容の可視化や対応品質の改善、FAQ整備に向けたデータ活用まで見据えてコールセンター運営を最適化したい場合は、ぜひご相談ください。

1.コールセンターにおけるVOC分析とは

コールセンターにおけるVOC分析は、顧客対応データを起点として業務全体を改善するための手法です。
電話・チャット・メール・SNSなど顧客接点の多様化にともない、コールセンターには問い合わせの増加と対応品質向上の両立という課題が生じています。
このような状況のなかで、コールセンターに蓄積された顧客の声を分析し、根本的な業務課題を特定・解消する手法としてVOC分析への関心が高まっています。
(1)VOCとは
VOC(Voice of Customer)とは、製品・サービスに対する顧客の意見・要望・不満・評価などの総称です。
コールセンターにおけるVOCには、商品に関する問い合わせ、契約内容の確認、サービスへの要望、苦情・クレーム、オペレーター対応への評価、通話後アンケートの回答などが含まれます。
VOCは、数値として集計・分析できる定量データと顧客の発言内容や感想など数値化しにくい定性データに分類されます。
| 分類 | コールセンターでの具体例 |
|---|---|
| 定量データ | 問い合わせ件数、応答率、放棄呼率、平均通話時間、アンケート評価点数、NPSなど |
| 定性データ | クレーム内容、商品への要望、対応への評価、自由記述アンケート、通話録音の内容など |
定量データは問い合わせ傾向や業務状況を把握するために活用されます。
一方、定性データは顧客がなぜ不満を感じたのか、どのような改善を求めているのかといった背景を把握するために活用されます。
(2)コールセンターにおけるVOC分析の役割

①問い合わせが多い原因を特定する
VOC分析によって入電理由を体系的に分類することで、特定のカテゴリに集中している問い合わせを特定し、その根本原因を追うことができます。
例えば、操作方法に関する問い合わせが全体の30%を占めている場合、マニュアルの改訂・FAQ整備・製品UIの見直しといった具体的な対策の検討に移ることができます。
そのためVOC分析を行う際には問い合わせ分類の粒度設計と、分類ラベルの定義統一を事前に行う必要があります。
②オペレーター対応品質を改善する
VOC分析は、個々のオペレーターの対応品質を客観的に評価する根拠データとしても機能します。
通話録音のテキスト化データや顧客満足度スコアを組み合わせることで、対応時間・解決率・顧客評価の相関を確認することができます。
分析結果をもとに、解決率が低い問い合わせカテゴリを特定し、対応スクリプトの改善やロールプレイング研修の内容見直しに反映させることが可能です。
また、モニタリング評価の基準づくりにもVOCデータを活用することで、評価の属人性を低減できます。
③顧客満足度向上につなげる
顧客満足度は、コールセンターの運営状況や応対品質を評価する重要な指標として活用されています。VOC分析によって、通話後アンケートのスコアと対応内容の突合せにより、この満足度を下げている要因を特定できます。
特に解決までに複数回の入電が必要なリピートコールは、顧客満足度を低下させる要因として特に注目すべき指標です。こうした場合、リピートコール率の推移をモニタリングし、初回解決率の向上に向けた対策を立案することが有効です。
④商品・サービス改善に活用する
コールセンターに蓄積されたVOCは、製品開発・サービス改善にとって有用なインサイト源となります。問い合わせ内容から潜在的な不満・機能要望・説明の不備を抽出し、開発部門やマーケティング部門に定期的にフィードバックする体制を整えることが可能です。
この際、VOCを単なる苦情データとして扱うのではなく、改善優先度の判断材料として位置付けて件数・重要度・対応難易度などの軸で整理したレポート形式で共有することで、受け取り部門での活用が進みやすくなります。
2.コールセンターにおけるVOC分析の実施方法

VOC分析は、データ収集から施策実行・効果検証まで一連のサイクルとして運用することで、継続的な改善につながります。ここでは各ステップの実務内容と、担当者が確認すべき事項を順に解説します。
(1)顧客の声を収集する
コールセンターには問い合わせや要望、苦情などさまざまな顧客の声が集まるため、収集対象を明確にすることで後続の分析精度を高められます。
主な収集源としては、通話録音データ、オペレーターによる応対履歴や対応メモ、通話後アンケート、チャットボットや有人チャットの会話ログ、メール対応履歴などがあります。
| 収集チャネル | 取得できる主な情報 | 活用例 |
|---|---|---|
| 通話録音データ | 顧客の発言内容、感情、要望、不満 | クレーム要因分析、応対品質改善、オペレーター教育 |
| オペレーター対応メモ | 問い合わせ内容、対応結果、申し送り事項 | 問い合わせ傾向の把握 |
| 通話後アンケート | 顧客満足度、評価コメント | CS向上施策の立案 |
| チャットログ | 問い合わせ内容、離脱ポイント | FAQ改善、自己解決率向上 |
| メール対応履歴 | 要望、質問、苦情内容 | 商品・サービス改善 |
| Webフォーム・SNS | 投稿内容、意見、要望 | 顧客ニーズの把握 |
収集したVOCは、問い合わせ種別や商品カテゴリ、満足度評価などの項目ごとに整理することで、頻出する課題や改善テーマを抽出しやすくなります。
(2)データを分類・整理する
収集したVOCデータの分類体系は、業務改善の目的に合わせて設計することが重要です。
例えば「配送遅延に関する問い合わせ」「操作方法に関する質問」「料金への不満」といった形で分類することで、どの課題が多く発生しているのかを可視化できます。
そのためデータ分類は、問い合わせ理由、製品・サービスカテゴリ、顧客属性、対応結果などの分類軸を定めてから設定します。
| 分類軸 | 分類例 |
|---|---|
| 問い合わせ理由 | 操作方法、故障・不具合、契約変更、料金確認、クレーム |
| 製品・サービスカテゴリ | 製品A、製品B、保守サービス、アプリ |
| 顧客属性 | 法人・個人、新規顧客・既存顧客、業種、地域 |
| 対応チャネル | 電話、メール、チャット、Webフォーム |
| 対応結果 | 解決、折り返し対応、エスカレーション、未解決 |
| 感情・評価 | 満足、不満、要望、苦情 |
分類の粒度が粗すぎると課題の特定精度が下がり、細かすぎると集計の実務負荷が増大するため、大分類・中分類・小分類の3階層程度を設け、定期的に見直す運用が一般的です。
なお、分類作業の属人化を防ぐためにも、ラベル定義書を整備してオペレーター間での基準を統一することも重要です。
(3)課題や傾向を分析する
整理されたデータに対して、定量分析と定性分析に分類し、集計・傾向把握・原因分析を行います。以下のような定量分析と定性分析を組み合わせることで、表面的な現象だけでなく課題の原因まで把握しやすくなります。
| 分析区分 | 主な分析内容 | 把握できること |
|---|---|---|
| 定量分析 | 問い合わせ件数の推移 | 問題発生の増減傾向 |
| カテゴリ別の発生割合 | 発生頻度の高い課題 | |
| 一次解決率・解決率 | 対応品質や業務上の課題 | |
| 顧客満足度(CS) | 顧客評価の変化 | |
| 定性分析 | 通話録音の内容分析 | 不満や要望の背景 |
| チャットログ分析 | 問い合わせ発生要因 | |
| 自由記述アンケート分析 | 顧客ニーズや改善要望 | |
| 頻出ワード・テーマ分析 | 根本原因や共通課題 |
例えば「サービスにログインできない」という問い合わせが急増している場合、件数分析によって問題の発生を把握し、通話内容やチャットログを確認することで、特定のシステム更新後に不具合が発生していることが判明するケースがあります。
(4)改善施策を実行する
改善施策はコールセンター内部の業務改善だけでなく、商品・サービスや顧客接点全体に及ぶ場合があるため、発生件数や顧客への影響度を踏まえながら、優先順位を付けて実行します。
施策ごとに担当部署・実施スケジュール・期待効果を明確にし、関係部署との合意を得ることが前提となります。
また、この改善施策を確定させた時点で問い合わせ削減率や顧客満足度の変化など、効果を測定できるKPIもあわせて設定することで、施策の成果を評価しやすくなります。
なお株式会社ストラーツの「電話応対AIサービス」は、AIによる自動応答に加えて、通話内容の文字起こし・要約や会話データの蓄積にも対応しています。これにより、データ収集から改善施策の実行を一連の運用としてワンストップで対応できます。
(5)効果を検証して継続的に改善する
効果測定では、問い合わせ件数や初回解決率、顧客満足度スコア、リピートコール率などのKPIを用いて継続的にモニタリングします。施策実施前後の数値を比較することで、改善効果を定量的に把握できます。
コールセンターの業務改善に用いられる主要なKPIは、以下のとおりです。
| KPI | 測定内容 | 改善効果の例 |
|---|---|---|
| 問い合わせ件数 | 問い合わせ総数や特定カテゴリの件数 | FAQ改善による問い合わせ削減 |
| 初回解決率(FCR) | 1回の対応で解決した割合 | オペレーター品質向上 |
| 顧客満足度(CS) | アンケートなどによる顧客評価 | 顧客体験の改善 |
| リピートコール率 | 同一案件で再度問い合わせが発生した割合 | 案内品質の向上 |
| 平均処理時間(AHT) | 1件あたりの対応時間 | 業務効率化 |
| 自己解決率 | FAQやチャットボットで解決した割合 | オペレーター負荷軽減 |
顧客のニーズや市場環境は常に変化するため、「分析→改善→効果測定→再分析」のサイクルを継続的に回すことで、顧客体験の改善効果を積み上げることができます。
3.コールセンターのVOC分析に活用できるシステム・ツール

VOC分析を効率的に実施するためには、データ収集・変換・分析の各工程に対応したシステムを適切に組み合わせることが前提となります。
ここでは、コールセンターで活用されている主なシステム・ツールの特徴と選定時の確認事項を解説します。
(1)音声認識システム
音声認識システムは、通話録音データを自動でテキストに変換します。大量の通話録音を人手での確認コストを削減し、テキストデータとして後続の分析工程に渡すことができます。
主な選出基準は、業種・製品特有の専門用語への対応精度、話者分離(オペレーターと顧客の発言を識別する機能)の有無、既存のCTIや録音システムとの連携可否です。
音声認識の精度は製品ごとに差があるため、自社の通話データを用いた検証を経て導入判断を行うことが適切です。
以下の記事では、AIによる音声認識が可能なサービスを紹介しています。

(2)テキストマイニングツール
テキストマイニングツールは、テキスト化された通話データや対応メモから、頻出ワード・フレーズ・感情傾向などを自動抽出します。大量のテキストデータを人手で読み込むことなく、傾向把握と課題抽出を効率化します。
主な機能には、キーワード集計・共起分析・感情分析・トピック分類などがあります。
なおどのキーワードをどのカテゴリに紐づけるかなどの分析軸の設計は人手で行う必要があるため、ツール導入後の初期設定工数を見込んでおく必要があります。
(3)顧客管理システム
顧客管理システム(CRM)は、顧客情報と対応履歴を一元管理するシステムです。VOC分析においては、問い合わせ内容と顧客属性・契約情報を紐づけて分析する基盤として機能します。
ただし顧客管理システムに蓄積された対応メモの記述形式が統一されていない場合、分析精度が低下するため、導入・運用段階で入力項目・記述ルールを設計し、オペレーター間での入力品質を維持する運用ルールを整備することが重要です。
(4)AI分析ツール
AI分析ツールとして、通話テキストの要約・分類・感情分析を自動で行う機能を持つサービスが登場しています。これを活用することで、人手のラベリング作業を大幅に削減できます。
活用にあたっては、出力精度の検証と誤分類への対応方針を事前に定めておく必要があります。
また、個人情報を含む通話データをAIツールに入力する場合は、データの学習利用に関するポリシー確認や、社内のセキュリティ基準との整合確認も必須です。以下では近年注目を集めているAI感情分析ツールについて詳しく解説しています。

4.成功事例に学ぶ!VOC分析の結果を業務改善への活用方法
VOC分析の真の目的は、得られた知見を具体的な業務改善に反映させることにあります。ここでは、分析結果をどのように業務改善に接続するかを、活用の方向性ごとに解説します。
(1)株式会社NTTデータ・スマートソーシング:問い合わせが多い原因を特定する
VOC分析によって問い合わせ理由を分類・集計できれば、特定カテゴリへの入電集中が可視化されます。この集中を解消するためには、入電理由ごとに根本原因を特定し、コールセンター対応の改善ではなく、発生源となっている製品・情報・プロセスの改善へとアプローチする必要があります。
例えば株式会社NTTデータ・スマートソーシングのVOC分析では、まず単語頻度分析によって問い合わせのトレンドを確認し、その後、係り受け頻度分析や特徴表現抽出によって問い合わせ内容を詳細に分析しています。

頻出する問い合わせが確認された場合には、その内容が要望なのか苦情なのか、どのような背景で発生しているのかを深掘りして把握します。
(2)顧客満足度向上につなげる
VOC分析は、通話後アンケートのスコアと対応内容を照合することで、満足度に影響を与えている要因を特定できます。分析結果をもとに応対フローや問い合わせ導線、ナレッジ整備などを改善することで、顧客体験の向上につなげることが可能です。

アスクル株式会社では、お客様サービスデスクに寄せられたVOCを「VOCポータル」で全社共有し、品質マネジメント委員会において定期的に分析・活用しています。顧客から寄せられた意見や要望はカテゴリー別に整理され、商品やサービスの改善活動に反映されています。
また、チャットボットの導入や問い合わせ手続きの拡充、専門知識を持つプロフェッショナルアドバイザーの配置などを進めることで、利便性向上と満足度向上に取り組んでいます。さらに、サービス品質に関するKPIを設定し、改善施策の進捗を継続的に確認する体制を構築しています。
参考:https://askul.disclosure.site/ja/themes/100
(3)商品・サービス改善に活用する
問い合わせ内容や要望、苦情を継続的に収集・分析することで、顧客がどのような課題や不満を抱えているのかを把握できます。

株式会社タカギでは、コミュニケーションセンターに寄せられたVOCを社内イントラネットで共有し、全社員が顧客の声を確認できる仕組みを構築しています。品質保証部では、製品やサービスに関するクレームを分析し、重要な課題やニーズが含まれる場合には担当部署への共有や担当者会議での検討を行い、必要に応じて役員への報告も実施しています。
その結果、VOCから把握した顧客ニーズをもとに、新商品のタッチレス浄水器の開発・販売や、PayPayなどのQR決済の導入につなげました。
参考:https://www.kyushu.meti.go.jp/jirei/btoc/pdf/takagi.pdf
5.コールセンターのVOC分析で業務改善を成功させる鉄則

VOC分析の精度と改善への接続を確保するために、運用設計の段階から押さえるべき原則があります。最後に、業務改善を実現するための3つの鉄則を解説します。
(1)収集するデータの目的を明確にする
VOC分析の質は、収集するデータと分析の目的を最初に明確にできているかどうかに大きく左右されます。
分析プロジェクトの開始前に「何を明らかにするために分析するか」「分析結果をどの部署がどのような意思決定に使うか」を整理し、関係者間で合意を形成しておくことが重要です。
(2)分析結果を現場と共有する
VOC分析の結果を現場オペレーターや管理者に対しても定期的に共有することで、自分ごととして捉えられ、日常的なデータ収集の質が向上し、改善施策の実行においても協力が得られやすくなります。
共有の際には、対応が多い問い合わせの傾向、評価の高い対応パターンなどの現場が業務に活かせる形に加工して伝えることが重要です。分析部門と現場の間に情報の断絶が生じると、VOC活用の効果が限定的になります。
(3)改善施策の効果測定を行う
VOC分析に基づいて実行した施策の効果は、あらかじめ設定した指標で定量的に測定する必要があります。施策実行前後で対象指標を比較し、改善が確認できた場合は横展開を検討し、効果が不十分な場合は原因を分析して施策を修正します。
その結果、過去の実績に基づいて改善施策の優先順位や投資対効果を判断しやすくなり、より再現性の高い業務改善につなげることができます。
6.まとめ
VOC分析は、コールセンターに蓄積された顧客対応データを、問い合わせ削減・対応品質向上・顧客満足度改善・製品フィードバックという複数の業務改善に活用する取り組みです。
音声認識システム・テキストマイニングツール・CRM・生成AIなどのシステムを目的に応じて活用することで、分析の効率と精度を高めることができます。
なお株式会社ストラーツの「電話応対AIサービス」は、AIによる電話の一次対応に加え、通話内容の文字起こし・要約・感情分析・自動振り分けにも対応しており、コールセンターに蓄積される会話データをVOC分析や応対改善に活用しやすい形で残せます。問い合わせ内容の可視化やFAQ改善、オペレーター負荷の軽減まで含めてコールセンター運営を見直したい場合は、お気軽にご相談ください。




