積滞とは、コールセンターにおいて電話が応答可能な状態になるまで待機列に溜まっている状態です。これは、積待や待ち呼とも呼ばれ、いずれも同じ状態を表す用語です。積滞が常態化すると、放棄呼率の悪化や顧客満足度の低下、オペレーターの離職につながります。
本記事では積滞の発生原因や影響、解消・防止方法に加え、関連するコールセンター用語も整理して解説します。
株式会社ストラーツの「電話応対AIサービス」は、AIによる流暢な自由発話対応で電話受付の一次対応を自動化させられます。人による対応を根本的に減らすことで、コールセンターの積滞解消や予防にお役立ていただけます。

1.コールセンターで積滞が発生する原因と影響

コールセンターにおける積滞は、人員配置や入電数の変動など、複数の要因が組み合わさって発生します。
該当する原因と影響を併せて把握することで、自社の積滞がどの要因によって発生し、どこに対処すべきかを判断できます。
(1)最適化されていない人員配置
積滞は、オペレーターの総数が足りている場合でも発生します。
時間帯別の入電数と配置人数が噛み合っていないと、入電が集中する時間帯だけ対応可能な人員が不足し、待機列に呼が積み上がるためです。
配置が最適化されない主な要因は、入電予測の精度が低いことと、時間帯の繁閑を反映しない固定パターンのシフト作成です。人員の絶対数を増やす前に、まず配置のミスマッチを解消できないかを確認する必要があります。
(2)予測困難な入電数の急増
キャンペーンの実施や製品の不具合、料金改定などの告知をきっかけとして、通常時には想定していなかった規模の入電が短期間に集中する場合があります。このような入電数の急増は事前の予測が困難であり、通常のシフト体制では対応しきれず積滞が発生します。
入電急増時は待機時間が大きく延びるため、契約や支払いに関わる緊急性の高い問い合わせほど、待機時間の長さが顧客満足度の低下に直結します。
(3)FAQやナレッジ不足によるAHT(平均処理時間)の長期化
AHT(平均処理時間)が長期化すると、同じ人員数で処理できるコールの総数が減少し、積滞につながります。
AHTが長期化する要因の一つは、オペレーターが回答に必要な情報を即座に参照できる体制が整っていないことです。FAQやナレッジベースが整備されていない、または検索性が低い場合、オペレーターは確認作業に時間を要し、一件あたりの対応時間が延びます。
処理に時間がかかるほど待機列は伸び、長く待たされた顧客は本来の用件に加えて「待たされたこと」自体へのクレームを口にします。この二次クレームへの対応がAHTをさらに押し上げ、積滞を一段と深刻にします。
(4)ルーティング設定(運用・システム面)の不備
着信を振り分けるルーティングの設定に不備があると、対応可能なオペレーターが存在する状況でもコールが適切に割り当てられず、積滞が発生します。
ルーティング設定の不備は、組織変更や取扱商品の変更があった際に設定の更新が反映されないことが主な原因です。この場合、人員は足りているにもかかわらず特定のオペレーターにコールが集中し、対応漏れや待ち時間の偏りが生じます。結果として、稼働に余裕のある人員がいながら放棄呼が増え、応答率と顧客満足度の低下を招きます。
2.コールセンターの積滞を解消・防止する方法

コールセンターの積滞は、配置・ルーティング・処理時間・呼量のどこにボトルネックがあるかを特定し、即効性の異なる手法を組み合わせるのが実務の定石です。短期の応急策と中長期の構造改善を並行させることで、繁忙期を凌ぎながら積滞の起きにくい体制へ移行できます。
ここでは、コールセンターの積滞を解消・防止する方法について解説します。
(1)人員配置の最適化
人員配置の最適化は、入電数と稼働人員数のミスマッチを解消する最も本質的な対策です。
ただし予測精度の確立にはデータの蓄積が必要で、効果が安定するまでに一定の期間を要します。即効性を求める局面では、後述のルーティング最適化や自動化と併用します。
経験と勘に頼ったシフト管理から脱却し、ワークフォースマネジメントのサイクル(フォーキャスト → 必要人員数の算出 → スケジューリング → 当日管理)を回します。各工程で押さえるべき実務ポイントは次の通りです。
| 手法 | 具体的な方法 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 入電予測 | 過去の入電データを15〜30分単位に分け、曜日・時間帯・季節ごとの傾向を読み取って、先の入電数を見込む | ・予測と実績のズレを毎回振り返って精度を上げていく ・プロモーションや料金改定、障害など普段と違う要因は、通常の予測とは別に上乗せして見込む |
| 必要人員数の算出 | 見込んだ入電数に、1件あたりの処理時間と応答目標(例:20秒以内に80%応答)を掛け合わせ、必要な席数を計算する ※この計算には「アーランC式」という待ち行列の計算式が使われる | ・アーランC式は、顧客が待ちきれずに切る(放棄呼)ことを想定しない前提のため、放棄の多い現場では必要席数を多めに見積もってしまう ・放棄を織り込んだ計算や実績に基づく補正を併用する |
| 在籍人数への変換 | 計算で出た「電話に出ている必要がある人数」を、休憩・研修・離席・欠勤などで実際の応対に充てられない時間の割合(現場でおおむね25〜35%)で割り戻し、シフトに入れるべき実際の人数を出す | ・割り戻しをしないと、計算上は足りていても現場では人が足りず積滞する ・積滞が慢性化する現場の多くは、この換算の見落としが原因であることが多い |
| 当日の調整 | 応答率・待ち呼・稼働率をリアルタイムで見ながら、予測とのズレを、スキル応援・休憩時間の調整・残業などで時間帯ごとに補正する | ・稼働率の目安はおおむね80~85%前後 ・常に90%を超えている場合は、疲弊や離職につながりやすく、席数不足のサインとして扱う |
これらをシステムや運用に落とし込むことで、現場の勘に頼らない積滞の起きないシフト体制の構築が可能になります。なお人員配置の最適化において即効性を求める場合は、後述のルーティング最適化や自動化と併用します。
(2)着信ルーティングの最適化
着信ルーティング(電話の振り分け)の最適化は、いまの人員のまま待機列の偏りをなくし、積滞を軽くできる、効果の出やすい対策です。
特定のオペレーターにコールが集中するのを防ぎ、待機列全体をスムーズに処理できるようにします。
| 手法 | 具体的な方法 | ポイント |
|---|---|---|
| スキルベースルーティング (スキル別の振り分け) | オペレーターごとに対応できる範囲(商品知識・対応言語・難易度など)を登録し、問い合わせ内容に合った人へ自動でつなぐ | ・対応範囲を細かく分けすぎると、それぞれの担当グループが小さくなり、かえって効率が落ちる ・手が空いている人がいても別グループのコールには出られなくなるため、グループはある程度広めにまとめ、溢れたときの受け皿を用意しておく方がうまくいく |
| 溢れたコールの受け渡し | ある窓口の待ち呼や待ち時間が一定を超えたら、別のスキルを持つ人や他の拠点へコールを回す | ・回した先が今度は積滞しないよう、受け渡し先の余力を見て設計する ・拠点間で回す仕組みは、災害時の振り分け(BCP)にもそのまま使える |
| 優先順位の設定 | 緊急度や顧客の属性(解約の懸念がある顧客など)に応じて、待機列での順番を調整する | ・優先度を上げた分だけ、他の顧客の待ち時間は延びる ・全体の待ちが増えるだけにならないよう、優先する条件は絞る |
| ルールの定期見直し | 組織変更や取扱商品の変更に合わせて、振り分けルールを更新する | ・見直しを個人任せにせず、「いつ・誰が更新するか」を運用の手順として決めておく ・ルールが古いまま放置されると、振り分け設定の不備になる |
ルーティング設定は、組織や取扱商品の変化に合わせて、継続的に更新していくことを前提に運用します。
(3)AHT(平均処理時間)の短縮
AHT(平均処理時間)の短縮は、1件あたりの対応を速くすることで、同じ人数でもっと多くのコールを捌けるようにする対策です。「必要な情報をすぐ参照できない」状態を解消することが、主な手法となります。
| 長い部分 | 打ち手 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 保留・確認の時間 | FAQやマニュアルを最新の状態に保ち、探しやすく整える | 確認のための保留や離席が減り、通話中の停滞がなくなる |
| 後処理の時間 | 通話後の記録づくりや要約を、AIで自動化する | 1件あたりの後処理が短くなり、次のコールに早く戻れる |
| 判断・案内の時間 | よくある対応の進め方(トークの流れ)をあらかじめ整理しておく | 応対中に迷う時間が減り、人による対応のばらつきも抑えられる |
注意すべきは、AHTだけを見るのではなく、一度で解決できた割合(一次解決率)や顧客満足度と合わせて確認し、対応の質を落とさないことです。
対応を急ぐあまり一度で解決できないケースが増え、かけ直しの電話が増えてかえって全体の手間が増える場合があります。
(4)呼量コントロールとAIによる応対の自動化
呼量コントロールとAIによる応対の自動化は、いずれも人を介さずに問い合わせを処理することで、オペレーターが対応すべきコールの総量そのものを減らすアプローチです。
電話以外の手段へ問い合わせを誘導する取り組みと、電話の窓口自体に自動応答や予約のしくみを組み込む取り組みを組み合わせ、積滞の発生源である呼量を多方面から減らします。
●電話以外への誘導
| 方法 | 具体的なアプローチ | 期待される効果 |
|---|---|---|
| FAQ・ナレッジの整備 | よくある問い合わせをもとに、顧客向けFAQの中身と探しやすさを見直す | 電話以外で自己解決できる人が増え、入電そのものが減る |
| チャット等の代替チャネル整備 | チャットやWebでの手続き窓口を設け、そこへ案内する導線をつくる | 電話への集中がやわらぎ、問い合わせが分散する |
●自動応答による一次対応
| 方法 | 実務における具体的なアプローチ | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 自動化できる範囲を見極める | 問い合わせのうち、決まった手順で完結できるものを洗い出す | どこまで自動化できるかを見積もり、導入範囲を決められる |
| かけ直し予約を用意する | 待機列に並ばせる代わりに、後でこちらから電話をかけ直す予約を受け付ける | 待たされて切られる放棄呼を直接減らし、混雑する時間帯の入電を後ろにずらして平準化できる |
| ボイスボットで一次対応する | よくある定型の問い合わせを、自動音声で応答させる | オペレーターが対応すべきコールの総量を減らせる |
定型的なシナリオにのみ答えるボイスボットは、想定外の質問や、複数の用件が混ざった問い合わせ、言い直しには弱く、人への引き継ぎが増えると削減効果が頭打ちになりやすい面があります。
その点、株式会社ストラーツの「電話応対AIサービス」は、商品名による対応の切り替えや、氏名・電話番号の聞き取りはもちろん、AIが尋ねた内容とは関係のないことを途中で質問されても対応が途切れません。そのため自動で完結できる範囲が広く、呼量を減らす効果をさらに高められます。
3.コールセンターでの積滞を解消した事例
(1)明治安田生命保険相互会社:応答率が毎月90%以上を継続

明治安田生命保険相互会社のコミュニケーションセンターでは、震災や外貨保険関連の問い合わせ急増によって、応答率が90%を下回る期間が継続するという課題がありました。
この課題に対し、同社は応答率の段階に応じた応援体制の整備、積滞時におけるボイスボットへの転送機能の活用、災害時に他拠点へ入電を振り分けるBCP体制の強化など、複数の施策を組み合わせて対応しました。
この取り組みにより、同社の応答率は毎月90%以上の水準を継続し、年間応答率も向上しました。入電急増という単一の要因に対して、応援体制とボイスボット転送という複数の対策を並行して講じたことが、応答率の安定につながっています。
(2)ジブラルタ生命保険株式会社:入電数94%減少とサービスレベルの向上

ジブラルタ生命保険株式会社のコンタクトセンターでは、繁忙期に控除証明書の再発行などの問い合わせが急増する一方、オペレーターの増員には限界があり、サービスレベルの目標値である70%の達成が難しい状態が続いていました。
この課題に対し、同社は控除証明書の再発行をデジタルツールから直接依頼できる仕組みを導入し、電話以外の手段への問い合わせの誘導を進めました。あわせて、生成AIによる通話後対応の自動化も実施し、1件あたりの処理時間の短縮にも取り組みました。
この取り組みにより、控除証明書再発行に関する電話件数は前年から94%減少し、サービスレベルは70%台から80%台へ向上し、6か月以上にわたって目標値を継続して達成しています。入電数そのものの削減によって、安定的な改善につながっています。
(3)GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社:毎月2人分の工数が削減

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社のカスタマーサポートグループでは、サービスの利用拡大に伴う電話および有人チャットでの問い合わせ増加によって、対応工数に時間を取られる状態が継続していました。
この課題に対し、AIチャットボットは回答精度97%を維持した上で有人チャットから完全に切り替え、IVRでは電話で完了できない問い合わせを問い合わせフォームへ誘導する仕組みを整備しました。
この取り組みにより、有人チャットへの切り替えによって毎月2人分の工数が削減され、問い合わせフォーム誘導によって問い合わせ数が100件(700分)減少しました。一次対応の自動化とルーティングの見直しを同時に進めたことが、対応工数の削減に直結しています。
4.積滞以外のコールセンターで使われる関連用語一覧

積滞対策が単一手法で留まらない以上、関連するKPIやシステム用語を正確に理解しておくことが重要です。
最後に、業務・指標系の用語とシステム・運用系の用語に分けて整理します。
(1)業務・指標系の重要KPI
積滞の発生状況や対応品質を数値で把握するためには、複数のKPIを組み合わせて確認する必要があります。いずれの指標も応答率や処理時間との関係性を併せて確認することで、積滞の実態を正確に把握できます。
| 用語 | 定義 |
|---|---|
| ASA(平均応答速度) | 顧客が応答を待った平均時間 |
| サービスレベル(SL) | 設定時間内における応答率の目標値 |
| 放棄呼率 / あふれ呼(オーバーフロー) | 積滞の限界により切断・転送された呼 |
| AHT(平均処理時間) | 通話から後処理までにかかる総時間 |
| 稼働率 | オペレーターの労働時間のうち、顧客対応(通話・後処理・待機など)に充てられた時間の割合で平均70~75% |
これらの指標は、いずれも積滞の発生によって悪化する傾向があるため、定期的なモニタリングの対象として運用に組み込む必要があります。
(2)システム・運用系の用語
積滞対策で導入を検討するシステムには、それぞれ異なる役割があります。各用語の機能範囲を理解しておくことで、自社の課題に対してどのシステムが対応するかを判断しやすくなります。
| 用語 | 定義 |
|---|---|
| キュー(Queue) | 積滞している待機列そのもののシステム呼称 |
| IVR(自動音声応答) | 音声ガイダンスによる自動振り分けシステム |
| WFM(ワークフォースマネジメント) | 人員配置やシフトを最適化する管理手法 |
これらのシステムは単独で導入するよりも、互いの機能を連携させることで、積滞対策としての効果を高めることができます。
5.まとめ
積滞は、人員配置の不一致、入電数の急増、AHTの長期化、ルーティング設定の不備など複数の要因によって発生し、放棄呼率の悪化や顧客満足度の低下、二次クレームの誘発、離職率の上昇という形で連鎖的な影響を及ぼします。
自社の積滞発生状況を時間帯別・問い合わせ種別ごとに分析し、原因に応じた対策を組み合わせて検討する必要があります。
導入後も担当エンジニアがお客様の運用に合わせて継続的にチューニング・カスタマイズを実施します。コールセンターの積滞を解消し、電話応対の効率化を実現したい方は、ぜひ株式会社ストラーツまでお問い合わせください。




