コールセンターのエフォートレス化で削減できる顧客の手間は、以下の3つです。
- 「つながるまで待つ」
- 「同じ説明を繰り返す」
- 「認識されず言い直す」
一方で、効果がどこまで出るかは、問い合わせがどの程度定型化しているか、既存システムを照会できるか、稼働後に調整を続けられるか、という条件で決まります。この記事では、削減できる手間と削減できない手間を条件付きで整理します。
株式会社ストラーツの電話応対AIサービス「AnnVoice Agent」は、この3つの手間を削減する一次受けを担い、導入後の調整までエンジニアが継続して対応します。

1.コールセンターにおけるエフォートレスとCESの定義

(1)エフォートレスの定義
エフォートレス(effortless)とは、顧客が問題を解決するまでに費やす手間・時間・心理的負荷が小さい状態を指します。コールセンターでは「電話がつながる」「一度の説明で済む」「たらい回しにされない」という、摩擦が発生しない状態がこれにあたります。
重要なのは、エフォートレスが顧客を喜ばせる施策ではないという点です。
期待を超える対応を目指す発想とは方向が逆で、期待どおりに終わらせることを目的とします。この違いは施策の優先順位を変えます。
例えば、転送回数が多い窓口であれば、オペレーターの応対スキル研修よりも、転送回数を1回減らす設計変更のほうが、エフォートレスの観点では優先度が高くなるケースがあります。
(2)CES(顧客努力指標)による測定について
CES(Customer Effort Score)は、問題解決の容易さを顧客自身に評価してもらう指標です。
CEB(現Gartner)が2010年のHarvard Business Review掲載論文「Stop Trying to Delight Your Customers」で提唱しました(出典:Harvard Business Review, 2010年7-8月号)。改訂版のCES 2.0では、「企業は私の問題処理を容易にしてくれた」という記述への同意度を7段階で問う形式が用いられます。
出典:Gartner
CESは、ブランド全体への評価を測るNPSや、個別接点の満足度を測るCSATとは対象が異なります。
| 指標 | 測定対象 | 計測タイミング | エフォートレス施策との関係 |
|---|---|---|---|
| CES | 解決までの労力 | 対応直後 | 施策の効果を 直接測る |
| CSAT | 個別接点の満足度 | 対応直後 | 施策ごとの 効果検証に使う |
| NPS | ブランドへの推奨意向 | 定期調査 | 中長期の変化を 把握する |
| FCR | 初回解決率 | 稼働データから算出 | 運用改善の進捗を 確認する |
CESを導入する場合は、施策実施前のスコアを取得しておく必要があります。事前値がないと改善幅を示せず、施策の投資判断に使えません。運用時に決めるのは次の4点です。
- 聴取タイミング
- 聴取方法
- 設問数
- スコアの読み方
事前に取得したスコアは、運用時に決める4点(聴取タイミング・聴取方法・設問数・スコアの読み方)と合わせて、社内で記録・共有しておきます。
2.コールセンターのエフォートレス化に取り組む前の確認ポイント

(1)どの手間から減らすかはVOC分析で決める
VOC(Voice of Customer)分析とは、問い合わせ・クレーム・要望といった顧客の声を収集し、改善に反映する取り組みです。エフォートレス化においては、施策を選ぶ前に「自社ではどの手間が最も多く発生しているか」を特定する工程にあたります。ここで見るデータは3つです。
- 通話ログの用件別分類
- 「分かりにくい」「見つからない」「つながらない」といった表現の出現頻度
- 同一顧客からの再入電と、その間隔
「説明書が分かりにくい」が集中していればFAQと同梱資料の改訂、「つながらない」が多ければ一次受けの自動化、というように、同じエフォートレス化でも着手すべき施策は異なります。
ただし、VOCは声を上げた顧客の分布であり、何も言わずに離脱した顧客は含まれません。放棄呼数や再入電率など、発話を伴わないデータとあわせて確認することが求められます。
以下の記事では、コールセンターのVOC分析に関する詳細をご確認いただけます。

(2)削減できる手間と成立条件
エフォートレス化で削減できる手間は限定的で、いずれも成立条件があります。条件を確認せずに施策を実行しても効果は出ません。
| 顧客の手間 | 削減手段 | 効果が出る条件 |
|---|---|---|
| つながるまで待つ | 一次受けの自動応対(営業時間外を含む) | 着信が特定時間帯や営業時間外に集中し、かつ一次受けで完結する用件が一定割合を占めていること |
| 同じ説明を繰り返す | 転送時の会話内容の引き継ぎ | 引き継ぎ先のシステムと連携でき、有人側が内容を確認できる導線があること |
| 認識されず言い直す | 顧客の言い回しを想定した音声認識・用件振り分けの設計 | 問い合わせログから顧客が実際に使う表現を抽出でき、用件数が限定されていること |
このうち効果が最も明確なのは「つながるまで待つ」手間の削減です。着信が特定時間帯に集中し、一次受けで完結する用件が一定割合を占める窓口であれば、一次受けの自動化によって構造的に解消しやすくなります。
(3)「言い直す」手間は認識精度の設計で決まる
エフォートのうち最も見落とされやすいのが、顧客が用件を自分の言葉で伝えられず、言い直しや操作のやり直しを強いられる手間です。
「待たされる」手間は通話がつながるまでの話ですが、この手間は通話がつながった後に発生します。つながった時点では解消したように見えるため、着信数や応答率といった指標には表れません。この手間が発生するのは、主に次の3つの場面です。
- プッシュ操作でしか用件を伝えられず、当てはまる選択肢がない
- 話しかけたが認識されず、同じ内容を繰り返す
- 案内された内容が、すでにWebサイトで見た情報と同じだった
いずれも「顧客が伝えたいことを、そのまま受け取れていない」状態です。自動応対を導入しても、この状態が残っていれば手間は減りません。むしろオペレーターにつながる前に一工程増えるぶん、増えることもあります。とくに受け取りが難しいのは、次のような情報です。
| 氏名の漢字 | 同音異字、表記のゆれ |
|---|---|
| 住所 | 地名の読み、丁目・番地の区切り |
| 型番・品番 | 英数字の連続、アルファベットの聞き分け |
これらは汎用の音声認識エンジンでは誤りやすく、辞書登録や補正ルールを自社の実データに合わせて用意して初めて実用水準になります。製品の選定で決まる部分ではなく、稼働後に通話ログを見ながら調整し続ける領域です。自社の窓口でこの手間がどの程度発生しているかは、次の手順で確認できます。
- 直近1か月の通話録音から、無作為に20件を抽出する
- 顧客が同じ内容を2回以上言い直している通話を数える
- 言い直しの対象が「氏名・住所・型番・商品名」のどれかを分類する
- その通話が最終的に解決したか、有人へ転送されたかを確認する
20件のうち数件でも言い直しが発生していれば、自動応対を導入する前に、どの情報をどう受け取るかを設計する必要があります。以下の記事ではコールセンターの音声認識について詳しく解説しています。

(4)音声で完結させない設計が有効な場合
住所、氏名の漢字、型番、メールアドレス、日程の候補といった「長い情報」を口頭でやりとりする工程は、聞き返しと復唱が発生しやすく、通話時間が延びます。この負荷は、自動応対でも有人対応でも同じように発生します。
対処として有効なのが、通話を続けたまま入力を画面に移す設計です。
通話中にSMSでフォームのリンクを送り、顧客が画面上で入力する形にすれば、聞き取りと復唱の工程がなくなります。顧客側の入力精度も上がるため、誤登録による再問い合わせの発生も抑えられます。
ただし、この設計が成立するのは次の条件を満たす場合に限られます。
- 発信元が携帯電話であり、SMSやLINEでリンクを届けられる
- 顧客層が通話中の画面操作を前提にできる
- リンク先のフォームが、入力後の処理まで既存システムにつながっている
固定電話からの発信比率が高い窓口や、高齢の顧客が中心の窓口では成立しません。この場合は、口頭での聴取項目そのものを減らす方向で設計します。
3.エフォートレス化だけで解決できない課題

コールセンターのエフォートレス化の失敗は、削減できない手間を削減できると見積もったときに起こります。
(1)自動応対だけでは完結できない問い合わせがある
顧客の状況を詳しく確認する必要がある相談や、社内での判断・承認を伴う問い合わせは、有人対応が必要になります。
| 問い合わせの例 | 自動応対だけでは完結しにくい理由 |
|---|---|
| 用件を明確に説明できない相談 | 状況を把握するために、 追加の質問や確認が必要になる |
| 過去の個別対応に関する問い合わせ | 担当者とのやり取りや例外対応など、 個別の経緯を確認する必要がある |
| 返金・解約・値引きなどの相談 | 企業側の判断や承認が必要になる |
| クレームや謝罪を求める問い合わせ | 情報を案内するだけでは対応が完結しない |
| 本人確認が必要な問い合わせ | 定められた確認手続きを行う必要がある |
エフォートを増やさないためには、自動応対で完結させる用件と、有人対応へ切り替える用件をあらかじめ分けておくことが必要です。
(2)問い合わせ内容によっては効果が出にくい
エフォートレス化の効果は、問い合わせの内容や運用環境によって変わります。
自動応対を導入しても、問い合わせの定型度が低い場合や、顧客情報を参照できない場合は、有人対応や折り返しが残り、顧客の手間を十分に減らせないことがあります。
| 条件 | |
|---|---|
| 問い合わせ内容の定型度が低い | 用件ごとの分岐を設計しにくく、 有人対応へ切り替わる問い合わせが残る |
| 既存システムに照会手段がない | 顧客情報や契約情報を確認できず、 折り返しや追加確認が必要になる |
| 用件が頻繁に入れ替わる | シナリオや案内内容を継続的に更新する必要がある |
| 運用担当を置けない | 認識精度や分岐内容の調整を継続できない |
| 自動応対で完結できる用件が少ない | 自動化しても有人対応へつながる問い合わせが多く残る |
導入前には着信件数だけでなく、どのような問い合わせが入り、そのうちどこまでを自動応対で完結できるかを確認します。自動化できる範囲が限られる場合は、すべての問い合わせを対象にするのではなく、受付や確認など定型化しやすい用件から対象範囲を切り分けます。
(3)チャネルを増やすことで顧客の手間が増える場合がある
電話に加えてチャットやフォームなどの問い合わせ窓口を増やしても、チャネル間で情報が連携されていなければ、顧客の手間が増える場合があります。窓口の数ではなく、問い合わせから解決までの流れがつながっているかを確認する必要があります。
| 状態 | 顧客に発生する手間 |
|---|---|
| 問い合わせ履歴が共有されていない | チャネルを変えるたびに経緯を説明し直す |
| 顧客情報が引き継がれない | 氏名や契約情報などを再度入力・回答する |
| チャネルごとに案内内容が異なる | どの案内に従うべきか確認する必要がある |
| 問い合わせ後の処理につながっていない | 別の窓口や手続きへ移動する必要がある |
チャネルを追加する場合は、問い合わせ履歴や顧客情報を引き継げるか、次の手続きまでつなげられるかを確認します。チャネルを移動しても説明や入力を繰り返さずに済む状態にすることが、エフォートを減らすうえで必要です。
(4)導入後も運用コストや工数が発生する
エフォートレス化のために自動応対を導入しても、初期構築だけで運用が完了するわけではありません。
問い合わせ内容や実際の通話データに合わせて、シナリオや認識精度を継続的に調整する必要があります。
| 発生する項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 問い合わせログの整備 | 用件別に分類し、 自動応対の対象となる問い合わせを整理する |
| シナリオの修正 | 問い合わせ内容や運用変更に合わせて 分岐や案内内容を見直す |
| 認識精度の調整 | 商品名や固有名詞、業界特有の言い回しなどを 実データに合わせて調整する |
| 既存システムとの連携 | 顧客情報や契約情報を 参照・登録するための接続を整える |
| 効果測定 | CESや再入電率などを確認し、 顧客の手間が減っているかを検証する |
これらの作業を継続できない場合は、認識や分岐が実際の問い合わせ内容と合わなくなり、顧客に聞き直しや転送などの手間が発生する可能性があります。導入前に初期費用だけでなく、稼働後の修正や効果測定を誰が担うかまで決めておきます。
(5)自動化の成果と顧客体験が一致しない場合がある
自動応対率や対応時間などの数値が改善しても、顧客の手間が減っているとは限りません。エフォートレス化では、自動化できた件数、問い合わせが解決したか、説明や再入電が増えていないかまで確認する必要があります。
| 確認する指標・状態 | 確認する理由 |
|---|---|
| 自動応対率 | 自動応対で終話した件数だけでは、 解決したかどうかを判断できない |
| 再入電率 | 一度の問い合わせで解決できず、 再度連絡していないかを確認する |
| 有人転送後の再説明 | 自動応対で伝えた内容を、 オペレーターへ説明し直していないかを確認する |
| CES | 問題解決までの手間を 顧客がどのように評価しているかを確認する |
| 問い合わせ後の処理 | 終話後に別の窓口や手続きへ移る必要がないかを 確認する |
自動応対で通話が終了していても、顧客が解決できずに再度電話をかけていれば、エフォートが減ったとは判断できません。そのため、自動化の成果を評価する際は、対応件数や処理時間、解決までに顧客が何回の説明や問い合わせを必要としたかもあわせて確認します。
(6)解決できない問い合わせを有人対応へつなぐ必要がある
自動応対で解決できない問い合わせは、顧客が同じ説明を繰り返さずに有人対応へ移れるように導線を設計します。自動応対を続けること自体を目的にすると、聞き直しや再説明が増え、顧客の手間につながる場合があります。
| 設計する項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 有人対応へ切り替える条件 | どのような状態になったら オペレーターへ転送するか |
| 顧客からの転送希望 | オペレーターへの接続を希望した場合に どう対応するか |
| 転送時に引き継ぐ情報 | 用件、聴取済みの情報、会話内容などを 有人側で確認できるか |
| 営業時間外の対応 | 折り返し受付やSMS・フォームへの誘導など、 次の対応につなげられるか |
有人対応へ切り替える際に、用件や聴取済みの情報を引き継げれば、顧客が最初から説明し直す手間を減らせます。また、すぐにオペレーターへつなげられない時間帯についても、折り返し受付など次の対応へ進める導線を用意しておくことが必要です。
4.自社のコールセンターがエフォートレス化に適合するかを判定する軸
以下の5つの軸で自社の状況を判定します。判定結果によって、着手すべき施策は異なります。
| 判定軸 | 確認方法 | 適合する場合の打ち手 | 適合しない場合の打ち手 |
|---|---|---|---|
| 着信量 | 月間着信数と、時間帯別の分布 | 集中時間帯があるなら一次受けの自動化 | 着信が分散・少量なら、まずFAQと折り返し運用の整備 |
| 用件の定型度 | 用件類型の上位10件(目安。分類数に応じて調整)が全体に占める割合 | 過半を占めるなら自動応対の対象になる | 過半に満たないなら、オペレーター支援(回答候補の提示、要約の自動化)を先に検討 |
| 既存システムの照会可否 | 顧客情報・契約情報を外部から参照する手段の有無 | 参照できるなら回答まで完結できる | 参照できないなら、連携開発の範囲と費用を先に確定させる |
| 時間外入電の比率 | 営業時間外の着信件数と用件の内訳 | 定型用件が多いなら24時間の一次受けが有効 | 時間外が少量なら優先度は低い |
| 運用担当の確保 | シナリオ修正・精度調整を担う人員を社内に置けるか | 置けるなら内製運用 | 置けないなら、運用を継続的に担う体制がある提供元を選ぶ |
「用件の定型度が低い」かつ「運用担当を置けない」に該当する場合、FAQの語彙見直しと転送ルールの再設計から着手したほうが、投下工数あたりの削減量が大きくなります。
以下の「コールセンターのエフォートレス化 実務チェックリスト」では、導入前の現状把握から実装、効果測定、稼働後の運用までを項目ごとにご確認いただけます。

>>コールセンターのエフォートレス化 実務チェックリストを確認する
上記のチェックリストはそのままコピーして自社の状況に当てはめてお使いいただけます。
まず現状を入力しながら各項目を確認し、課題がある部分を洗い出したうえで、自動応対の対象範囲や既存システムとの接続方法、有人対応への切り替えなど、具体的な実装・運用設計の検討に進めてください。
5.コールセンターでエフォートレス化の実装・運用設計

コールセンターでエフォートレス化を実装する際は、対象とする問い合わせの範囲や既存システムとの連携、有人対応への切り替え、効果測定、稼働後の調整方法を踏まえて設計します。
(1)自動応対の対象範囲を決める
自動応対の対象範囲は、問い合わせログを用件別に分類したうえで、「自動応対だけで完結できる用件」「前後の工程だけ自動化する用件」「対象外とする用件」の3つに切り分けて決めます。
| 用件の性質 | 判断・承認 | システム照会 | 扱い | 例 |
|---|---|---|---|---|
| 定型的な受付・確認・変更 | 不要 | 不要〜参照のみ | 自動応対で完結 | 営業時間の案内、予約の確認 |
| 定型だが顧客情報の参照が必要 | 不要 | 必要 | 連携できれば完結、できなければ折り返し | 契約状況の照会、配送状況の確認 |
| 本人確認を伴う手続き | 手順の遵守が必要 | 必要 | 前後の受付・聴取のみ自動化 | 住所変更、各種申請 |
| 判断・承認を伴う相談 | 必要 | 必要 | 用件の聴取までを自動化し有人へ | 返金、解約、値引き |
| 状況説明が定まらない相談・苦情 | 必要 | — | 対象外。速やかに有人へ | クレーム、原因不明の不具合 |
同じ用件名でも、扱いが分かれる場合があります。
例えば「解約」は、解約条件や違約金の有無を案内するだけであれば定型的な確認として自動応対で完結できますが、引き止めや例外的な条件変更が入ると判断・承認を伴う相談になります。用件名で一括りにせず、実際の通話でどこまでの処理が発生しているかを確認します。
(2)既存資産との接続方法を決める
自動応対は、既存の設備やシステムをすべて置き換えなくても導入できる場合があります。
決めるのは、どの情報を参照・登録するか(システム連携の範囲)と、既存のIVR・CTIのどこに自動応対を組み込むか(導入形態)の2点です。システム連携では、次を整理します。
| 参照する情報 | 顧客情報、契約情報、申込状況など |
|---|---|
| 登録する情報 | 受付内容や変更内容を、どのシステムへ反映するか |
| 対象システム | CTI、CRM、基幹システムなど |
| 接続方法 | APIなど外部から参照・登録できる手段があるか |
| 連携できない場合の扱い | 折り返しにするか、有人へ引き継ぐか |
既存資産との接続方法を決める際は、参照・登録する情報と自動応対を組み込む位置をあらかじめ整理し、既存の運用と自動応対の役割分担を明確にします。
(3)稼働後に回り続ける仕組みを決める
自動応対は、稼働させた時点が完成ではありません。問い合わせの内容は変わり、顧客の言い回しも増えていきます。導入時に決めた分岐や認識設定をそのままにしておくと、実際の問い合わせとの差が広がり、聞き直しや転送が増えていきます。
そのため、稼働後に「誰が」「何を見て」「どこまで変えられるか」まで含めて決めておく必要があります。
| 設計する項目 | 決めること | 誰が担うか |
|---|---|---|
| 有人対応への切り替え条件 | どの状態になったらオペレーターへ転送するか。顧客が転送を希望した場合の扱い | 運用ルールの決定は自社。判定ロジックの実装は提供元 |
| 転送時の情報引き継ぎ | 用件・聴取済みの情報・会話内容を、有人側のどの画面で確認できるか | 連携の実装は提供元 |
| 営業時間外の受け皿 | 折り返し受付、SMS・フォームへの誘導など、次の対応へつなぐ導線 | 設計・実装は提供元 |
| 効果測定の指標 | CES、FCR、放棄呼率、再入電率、有人転送率をいつ・どの単位で比較するか | 指標の選定は自社。データ抽出は提供元 |
| 想定外の用件・言い回しの検出 | 通話ログを定期的に確認し、設計に含まれていない発話を洗い出す | 継続的な確認が必要な作業 |
| シナリオ・分岐の修正 | 用件の変化に合わせて案内内容や分岐を変更する | 社内に担当を置くか、提供元に任せるかを決める |
| 認識精度の調整 | 商品名、固有名詞、業界特有の言い回しを実データに合わせて補正する | 同上 |
このうち下2つ、シナリオの修正と認識精度の調整は、稼働後に継続して発生し続ける作業です。担当を決めないまま導入すると、問い合わせ内容と設定の差が開き、導入時に減らした手間が時間とともに戻ります。
社内で担当を置く場合は、確認するデータの範囲と、変更できる範囲をあらかじめ決めます。置けない場合は、シナリオ変更と認識精度の調整が提供元の支援範囲に含まれているかを、契約前に確認します。ここが含まれていないと、変更のたびに個別見積もりと待ち時間が発生します。
(4)有人対応へ切り替えた後の運用体制を決める
自動応対で完結できない問い合わせは、有人対応へ切り替えた後の流れまで設計します。転送先の受付時間や担当部署、引き継ぐ情報をあらかじめ決めておくことで、顧客が同じ説明を繰り返す工程を減らせます。
| 確認する項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 転送先 | どの部署・担当者が対応するか |
| 対応可能な時間帯 | いつ有人対応へ接続できるか |
| 引き継ぐ情報 | 用件、聴取済みの情報、会話内容など何を共有するか |
| 転送できない場合の対応 | 折り返し受付や別の手続きへどうつなぐか |
| 有人側の確認方法 | 引き継いだ情報をどの画面・システムで確認するか |
有人対応へ切り替える場合は、その後の対応まで途切れずにつながる状態を整えます。営業時間外などすぐに接続できない場合についても、折り返し受付など次の対応へ進める方法を決めておきます。
(5)効果測定に使用する指標と計測方法を決める
エフォートレス化の効果を確認するには、顧客が解決までにどの程度の手間を要したかを確認できる指標を設定します。導入前に測定する指標と計測方法を決め、導入後も同じ条件で比較できる状態にします。
| 指標 | 確認する内容 |
|---|---|
| CES | 顧客が問題解決までの手間をどのように評価したか |
| FCR | 最初の問い合わせで解決できた割合 |
| 放棄呼率 | オペレーターにつながる前に顧客が通話を終了した割合 |
| 再入電率 | 一度の問い合わせで解決せず、再度電話した割合 |
| 有人転送率 | 自動応対からオペレーターへ切り替わった割合 |
指標を設定する際は、それぞれをどのタイミングで取得し、どの期間や用件単位で比較するかも決めます。
複数の指標を組み合わせて確認することで、待ち時間や再説明、再入電など顧客側の手間がどのように変化したかを把握できます。
(6)稼働後のシナリオ修正・精度調整の担当を決める
自動応対は、稼働後の問い合わせ内容や通話データを確認しながら、シナリオや認識精度を調整します。導入前に、誰がデータを確認し、どのような変更を担当するかを決めておきます。
| 運用項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 問い合わせ内容の確認 | 想定していなかった用件や言い回しが発生していないか |
| シナリオの修正 | 分岐や案内内容を誰が変更するか |
| 認識精度の調整 | 商品名、固有名詞、業界特有の言い回しなどを誰が調整するか |
| 転送条件の見直し | 有人対応へ切り替える条件を誰が確認・変更するか |
| 効果測定結果の反映 | CESや再入電率などの結果をどのように運用へ反映するか |
社内で担当する場合は、確認するデータと変更できる範囲を決めます。
提供元に運用を任せる場合は、シナリオ変更や認識精度の調整が支援範囲に含まれるかを確認し、稼働後も継続して改善できる体制を整えます。
(7)既存のIVR・CTIを活かした導入形態を決める
既存のIVRやCTIを利用している場合は、現在の仕組みを残しながら自動応対を組み合わせる方法もあります。導入目的や対象範囲に合わせて、どの位置に自動応対を組み込むかを決めます。
| 導入形態 | 内容 | 検討する状況 |
|---|---|---|
| 既存IVRを置き換える | IVRによる番号選択を自動応対へ切り替える | 現在のIVRによる振り分け方法を見直す場合 |
| 既存IVRの前段に自動応対を置く | 最初に用件を聞き取り、必要に応じて既存IVRや有人対応へつなぐ | 既存設備を残しながら受付方法を変更する場合 |
| 特定の番号・時間帯だけ自動応対へ振り向ける | 対象を限定して自動応対を利用する | 一部の用件や営業時間外から導入する場合 |
導入形態を決める際は、既存設備との接続方法、自動応対の対象となる番号や時間帯、有人対応への転送方法を確認します。既存のIVR・CTIをどこまで残すかを事前に整理することで、自動応対を組み込む範囲と既存運用との役割分担を明確にできます。
6.まとめ
コールセンターのエフォートレス化で削減できるのは、「つながるまで待つ」「同じ説明を繰り返す」「認識されず言い直す」の3つの手間です。いずれにも成立条件があり、条件を満たさない用件を無理に自動化すると、手間はかえって
増えます。
そのうえで、施策の成否を最後に分けるのは稼働後の運用です。問い合わせの内容は変わり、顧客の言い回しも増えていきます。シナリオと認識精度を実データに合わせて調整し続けられなければ、導入時に減らした手間は時間とともに戻ります。
株式会社ストラーツの電話応対AIサービス「AnnVoice Agent」は、この調整を担当エンジニアが行うことも可能です。運用担当を置けない窓口や、用件が頻繁に入れ替わる窓口ほど、この体制の差が効果の持続に表れます。自社の問い合わせのうち、どこまで自動応対で完結できるか。通話ログをもとに切り分けるところからご相談いただけます。


