電話対応AIとは?できること・できないこと・精度を実務目線で解説

電話対応AIを検討する際、多くの担当者がつまずくのは「結局どこまで自動化できるのか」という一点です。任せる範囲を見誤ったまま導入すると、かえって顧客の不満とオペレーターの負荷が増える結果になります。
本記事では、電話対応AIの仕組みを整理したうえで、AIができること・できないこと・音声認識精度の実態を実務観点で解説します。

株式会社ストラーツの「電話応対AIサービス」は、高精度な音声認識・感情分析・自動振り分けをフルカスタマイズでご提供しています。用件の聞き取りの他にも、氏名・電話番号・住所といった難易度の高いヒアリングにも対応します。実際の聞き取り精度は、デモ体験専用ダイヤルでお試しいただけます。

目次

1.電話対応AIとは?

電話対応AIとは、これまで人が担っていた受電・取次・案内などの業務を、AI技術によって自動化・効率化する仕組みです。音声認識自然言語処理感情分析といったAI技術を組み合わせることで、従来のシステムでは対応できなかった自然な会話や複雑な問い合わせへの対応が可能になっています。

以下の記事では、コールセンターにおけるAIについて包括的に解説しています。

(1)電話対応AIの定義と仕組み

電話対応AIとは、これまで人が担っていた受電・用件の聞き取り・回答・取次といった業務を、AI技術によって自動化する仕組みの総称です。ボイスボット、AI電話自動応答、AI電話代行など製品によって呼び名は異なりますが、基本的な処理の流れは共通しています。

重要なのは、この5ステップが1往復ごとに高速で繰り返されているという点です。
人間同士の会話では意識されませんが、AIは「聞く→理解する→考える→話す」を毎回ゼロから実行しています。そのため、どこか1ステップでも精度が落ちると、会話全体が破綻します。

たとえば②の音声認識が「注文番号」を「注文番地」と誤認識すれば、③以降がすべて狂います。電話対応AIの品質を左右するのは、個別の機能の豪華さではなくこの5ステップの連鎖がどれだけ安定しているかである、という点を押さえておいてください。

(2)電話対応AIを構成する4つの技術

電話対応AIは、単一の技術ではなく複数のAI技術の組み合わせで成り立っています。主要な4技術と、それぞれが通話のどの瞬間に機能しているかを整理します。

AIの種類概要通話中に働くタイミング主な活用例
音声認識AI発話内容をリアルタイムでテキスト化顧客が話している最中〜話し終えた直後問い合わせ内容の把握・議事録生成
自然言語処理(NLP)発話の意図・文脈を解析し最適な回答を生成テキスト化された直後(顧客が話し終えてから応答までの間)定型問い合わせの自動完結・FAQ対応
感情分析AI声のトーンや話し方から感情状態を検知通話開始から終了まで常時クレーム検知・有人対応への自動切り替え
音声合成AIテキストを自然な音声に変換して返答AIが応答する瞬間ボイスボットによる自動応答

上記の表で注目していただきたいのは、右から2列目の「働くタイミング」です。

音声認識AIは通話の入口を担うため、ここでの誤りが後工程すべてに波及します。導入検討時に最も重視すべき技術であり、後述する精度の議論も大半はこの音声認識に関するものです。

自然言語処理は、顧客が話し終えてからAIが応答するまでの「間」で働きます。この処理に時間がかかると、電話口では不自然な沈黙として体感されます。機能の豊富さだけでなく応答速度も評価軸に入れる必要があるのはこのためです。

感情分析AIだけは、特定の瞬間ではなく通話中ずっと動き続けている点が特徴です。顧客の声が荒くなった瞬間を検知して有人に切り替えるという運用は、この常時監視があって初めて成立します。

音声合成AIは出口を担当します。近年は肉声との区別が難しいレベルに達しており、ここが原因で顧客満足度が下がるケースは減っています。ただし、業界特有の読み方(型番、地名、専門用語)を正しく発音できるかは製品差が残る部分です。

これらは単独でも使われますが、組み合わせることで対応範囲が広がります。音声認識→自然言語処理→音声合成を連携させれば電話口での会話をAIが完結でき、さらに感情分析を加えれば、クレームの兆候を検知して自動でオペレーターに引き継ぐといった運用が可能になります。

以下の記事ではコールセンターにおける音声認識について詳しく解説しています。

(3)生成AI(LLM)で何が変わったか

近年の電話対応AIを理解するうえで避けて通れないのが、生成AI(大規模言語モデル/LLM)の影響です。従来型と何が違うのかを整理します。

シナリオ型(従来型)LLM型(生成AI活用)
応答の作り方事前に設計した会話フローに沿って分岐文脈を理解してその場で回答を生成
想定外の質問対応できず「担当者におつなぎします」で終了学習・参照した情報の範囲で回答を試みる
言い回しの揺れ「予約したい」は認識、「席を取りたい」は認識しない、といった事態が起こる表現が変わっても同じ意図として解釈しやすい
構築の手間分岐パターンを網羅的に設計する必要があるFAQやマニュアルを読み込ませる形で構築できる
回答の制御設計した内容しか話さないため制御しやすい意図しない回答(ハルシネーション)のリスクがある
適した用途手続きが決まっている業務(本人確認、注文受付)問い合わせ内容が多岐にわたる業務(FAQ対応)

「LLM型が常に優れている」わけではない
生成AIの登場で、シナリオ設計の負担が大きく下がり、想定外の言い回しにも対応しやすくなったのは事実です。一方で、回答内容の制御が難しくなるという副作用があります。
料金や契約条件を案内する場面で、AIが事実と異なる金額を生成してしまえば、そのままトラブルに直結します。このため実務では、手続き系はシナリオ型で厳密に制御し、FAQ系はLLMで柔軟に対応するというハイブリッド構成が主流になりつつあります。

製品を検討する際は「生成AI搭載」という表記だけで判断せず、どの部分に生成AIを使い、どの部分を固定の回答で制御しているかを確認してください。参照する情報源を社内FAQに限定できるか(=勝手に一般知識で答えないか)も、重要な確認ポイントです。

(4)法人向けと個人向け(iPhone・Pixelの自動応答)の違い

「電話対応AI」で検索すると、スマートフォンの自動応答機能に関する情報も混在します。両者は目的も仕組みも異なるため、混同しないよう整理しておきます。

個人向け(スマホの自動応答機能)法人向け(電話対応AIサービス)
主な目的迷惑電話・営業電話のフィルタリング業務の自動化・人手不足の解消
対応する回線個人のスマートフォン1台代表番号・コールセンター(複数回線同時)
同時通話1件数十〜数百件(製品による)
業務システム連携基本的に不可CRM・SFA・予約システムなどと連携可能
応答内容のカスタマイズほぼ不可、または限定的業務フローに合わせて自由に設計
対応履歴の管理端末内に留まる全通話の録音・文字起こし・分析が可能
費用端末機能として無償のことが多い月額課金(規模・機能により変動)

スマートフォン側の自動応答機能(Google Pixelの通話スクリーニング機能や、iPhoneの通話スクリーニング機能など)は、かかってきた電話にAIが代わりに出て用件を確認し、必要な電話だけをユーザーにつなぐというものです。個人の迷惑電話対策としては有効ですが、対応履歴を組織で共有したり、複数の担当部署に振り分けたりといった業務利用は想定されていません。

※提供状況や機能名称は、端末・OSバージョン・提供地域によって異なります。

本記事で扱うのは、後者の法人向け電話対応AIです。代表番号や問い合わせ窓口にかかってくる電話を業務として自動化する仕組みを前提に解説します。

2.電話対応AIでできること

電話対応AIが実務で担える業務を、用途別に整理します。

(1)一次受付・用件ヒアリング

最も導入効果が出やすいのが、着信直後の一次受付です。AIが電話に出て「どのようなご用件でしょうか」と問いかけ、顧客の回答から用件を判別します。

このとき同時に、氏名・電話番号・会社名・折り返し希望時間といった基本情報のヒアリングまで完結させられるのが、単なる留守番電話との決定的な違いです。担当者は用件と連絡先が揃った状態で折り返せるため、「もう一度最初から説明する」という顧客のストレスを解消できます。

営業電話への対応も一次受付の重要な役割です。「担当者に申し伝えます」とAIが応答することで、本来対応すべき電話だけを人に回せます。

代表的なサービス例電話応対AIサービス(株式会社ストラーツ)ミライAI(株式会社ソフツー)

(2)取次・自動振り分け

聞き取った用件に応じて、適切な部署や担当者へ自動的に転送します。従来のIVRが「配送に関するお問い合わせは2を」というプッシュ操作を求めるのに対し、電話対応AIは顧客が普通に話した内容から転送先を判断します。

顧客側の操作負担がなくなるだけでなく、選択肢を読み上げる時間そのものが不要になるため、通話時間の短縮にもつながります。部署間のたらい回しや誤接続といった、顧客満足度を大きく損なう事態の予防にも有効です。

CRMと連携させれば、発信者番号から顧客情報を引き当て、担当営業に直接つなぐといった運用も可能になります。

代表的なサービス例IVRy(株式会社IVRy)PKSHA Voicebot(株式会社PKSHA Communication)

(3)予約・注文受付

日時・人数・商品などの条件を聞き取り、予約システムや受注システムへ登録するまでを自動で完結させられます。営業時間外や休日の予約を取りこぼさない点が最大の効果で、飲食・宿泊・医療・修理受付といった業種で導入が進んでいます。

予約枠が埋まっている場合に代替日程を提示する、変更・キャンセルの受付まで対応するなど、製品によって対応範囲は異なります。既存の予約システムとAPI連携できるかどうかで実現度が大きく変わるため、この用途を想定している場合は連携可否を最初に確認してください。

代表的なサービス例AI Messenger Voicebot(株式会社AI Shift)、AIコンシェルジュ(株式会社TACT)

(4)文字起こし・自動要約・FAQ自動生成

AIが自動応答するのではなく、有人対応を支援する使い方です。通話内容をリアルタイムでテキスト化し、終話後に要点を自動要約します。

オペレーターにとっては、通話後の記録作成(後処理時間)が大幅に短縮されるという直接的な効果があります。管理者にとっては、全通話がテキストとして検索可能になることで、これまで抽出できなかった情報が扱えるようになります。

蓄積されたテキストから頻出質問を抽出してFAQを整備する、応対品質のばらつきを可視化して教育に活かすといった二次活用も可能です。「まず通話の可視化から」という段階的な導入を選ぶ企業も少なくありません。

代表的なサービス例CallConnect(株式会社fonfun)

(5)感情分析によるクレーム検知と有人切替

声のトーン、話す速度、発話の間などから顧客の感情状態を推定し、不満の高まりを検知します。一定の閾値を超えた時点で自動的にオペレーターへ引き継ぐ、あるいは管理者にアラートを飛ばすといった運用が可能です。

AIの弱点をAIで補う仕組みと考えると位置づけが理解しやすくなります。後述するとおり、電話対応AIは強いクレーム対応を苦手としますが、感情分析を組み合わせれば「苦手な場面に入る前に人へ渡す」という設計ができます。

有人対応に切り替える際、それまでの会話内容を引き継げるかどうかは重要な確認ポイントです。引き継げなければ顧客は最初から説明し直すことになり、かえって不満を増幅させます。

代表的なサービス例CT-e1/SaaS(株式会社コムデザイン)

(6)アウトバウンド(督促・リマインド・アンケート)

電話対応AIは受電だけでなく、企業側から架電する業務にも活用できます。
支払い督促、予約日のリマインド、契約更新の案内、顧客満足度アンケートなど、一件ごとの会話内容が定型化している業務が対象です。1日数百件規模の架電を人力で行えば相応の工数がかかりますが、AIが発信して応答があった場合のみオペレーターに引き継ぐ、あるいは全件AIで完結させることで、工数を大幅に圧縮できます。

なお、アウトバウンドは受電と異なり、架電のタイミングや頻度によっては顧客に不快感を与えるリスクがあります。実施前に、架電時間帯のルールや再架電の上限回数を設計しておく必要があります。

代表的なサービス例COTOHA Voice DXR Premium(NTTコミュニケーションズ株式会社)Terry(Hmcomm株式会社)

3.電話対応AIでできないこと・苦手なこと

導入の成否を分けるのは、できることよりもできないことを正確に把握しているかです。ここでは電話対応AIの限界を率直に整理します。

(1)複雑な交渉・例外判断・強いクレーム

電話対応AIが最も苦手とするのが、その場での裁量判断が求められる場面す。

具体的には、規約上は対象外だが事情を汲んで対応を検討すべきケース、値引きや納期の交渉、複数の要望が絡み合った相談などが該当します。これらはマニュアル化できないからこそ人が対応してきた領域であり、AIに任せると「規約上お受けできません」という杓子定規な応答に終始します。

強いクレームも同様です。感情的になっている顧客に対して、AIが定型的な応答を返すことは、多くの場合で状況を悪化させます。「機械に相手をさせられた」という体験そのものが、新たな不満の原因になるためです。

対策として現実的なのは、AIに解決させようとしないことです。 感情分析でクレームの兆候を検知したら即座に有人へ切り替える、あるいはクレーム窓口は最初から自動化の対象外とする、という設計が定石になります。

(2)方言・雑音・専門用語での認識精度低下

音声認識は、入力される音声の条件によって精度が大きく変動します。実務で問題になりやすいのは次のようなケースです。

精度が落ちる要因具体例
方言・訛り標準語と発音が大きく異なる地域からの入電
話速・滑舌早口、小声、高齢の顧客の発話
周囲の雑音屋外、車内、店舗内、工事現場からの発信
回線品質電波状況の悪い携帯電話、IP電話の音質劣化
業界用語・専門用語一般辞書に存在しない製品名・業界固有の略語
複数人の発話家族が横から補足する、電話を代わる

これらは製品を変えれば解決するという性質のものではなく、電話という媒体が持つ構造的な制約です。対面や画面入力と違い、音声情報しか手がかりがないため、聞き取れなければ確認する以外に手段がありません。

このうち専門用語については、辞書登録によってある程度改善できます。一方、雑音や回線品質は自社でコントロールできないため、聞き取れなかった場合にどう振る舞うか(言い直しを促す、有人へ回す)の設計で吸収することになります。

(3)固有名詞(氏名・住所・型番)の聞き取り

音声認識の中でも、とりわけ難易度が高いのが固有名詞です。

氏名は「サイトウ」だけでも斉藤・齊藤・斎藤・齋藤と表記が分かれ、住所は地名の読みが一般的な読み方と異なるケースが頻出します。型番や注文番号のような英数字の羅列は、「B」と「D」、「1」と「7」のように音が近い文字を取り違えるリスクが常に伴います。

この領域は、電話対応AIの実用性を分ける最大のポイントです。 用件の判別と転送だけなら多くの製品で実現できますが、「氏名と住所を正確に聞き取って登録まで完結させる」となると、対応できる製品は限られます。実務的な対策としては、以下のような設計が有効です。

  • 聞き取った内容を復唱し、顧客に確認を取る
  • 電話番号や注文番号は、プッシュ操作での入力に切り替える
  • 既存の顧客データベースと照合し、候補を絞り込んでから確認する
  • 漢字の確認が必要な場合は、SMSでの入力に誘導する

株式会社ストラーツの「電話応対AIサービス」は、高精度なAIと業務に合わせた調整により、用件の聞き取りはもちろん氏名・電話番号・住所といった難易度の高いヒアリングに対応しています。ぜひ実際の聞き取り精度をデモ体験専用ダイヤルでお確かめください。

(4)学習していない問い合わせへの対応

AIが回答できるのは、事前に登録・学習させた情報の範囲に限られます。想定していなかった質問には対応できません。

見落とされがちなのが、この範囲が時間とともにズレていくという点です。新商品の発売、キャンペーンの開始、料金改定、システム障害など、企業側の状況が変われば問い合わせ内容も変わります。導入時に整備したFAQのまま放置すれば、回答できない問い合わせが徐々に増え、有人への転送率が上昇していきます。

製品タイプによって「できない」の意味が異なる点に注意が必要

シナリオ型は、登録した回答以外を話さないため、答えられない場合は確実に「答えられない」という振る舞いになります。対応範囲は狭いものの、誤った案内が顧客に届くことは構造的に起こりません。
一方、生成AIを活用した製品では、学習していない内容に対して「答えられない」と返すのではないため、もっともらしい誤答を生成してしまうケースです。対応できる範囲は広い代わりに、誤答が混ざる可能性を運用でカバーする必要があります。

つまり両者は「対応範囲の広さ」と「回答の確実性」を交換関係に置いた設計であり、どちらが自社にとって許容できないリスクかで選ぶべきものです。料金・契約条件・医療・行政手続きのように誤案内が実害に直結する業務では、対応範囲を絞ってでも確実性を優先する判断が合理的になります。

(5)AIに任せる業務と有人で残す業務の切り分け方

ここまでの内容を踏まえ、自社の入電をどう切り分けるかを考えます。判断軸は「発生頻度」と「判断の難易度」の2つです。

判断難易度:低(定型的)判断難易度:高(裁量が必要)
頻度:高① AIで完全自動化
営業時間の案内、配送状況の照会、予約受付、資料請求受付
→ 最優先で自動化。効果が最も大きい
② AIで一次受付+有人へ
技術的な問い合わせ、複数条件が絡む相談
→ AIが情報を聞き取り、担当者に引き継ぐ
頻度:低③ AIで自動化(余力があれば)
営業電話の振り分け、FAQ的な照会全般
→ 費用対効果を見て判断
④ 有人対応を維持
クレーム、契約交渉、例外的な要望
→ 自動化の対象外とする
進め方の手順
  1. 直近1〜3か月の入電を、用件の種類ごとに分類して件数を数える
  2. 各用件を上記マトリクスの①〜④に振り分ける
  3. ①から着手し、効果を確認しながら②へ広げる
  4. ④は自動化せず、②の一次受付を通じて確実に人へ渡す導線を作る

多くの企業では、入電全体の3〜5割程度が①に該当します。ここを自動化するだけでも、オペレーターの負荷は目に見えて下がります。逆に、最初から④まで含めて自動化しようとすると、シナリオが複雑化して構築が長期化し、顧客からの不満も招きやすくなります。

なお、この切り分けは一度決めて終わりではありません。運用しながら、②のうち定型化できるものを①へ移していくのが、効果を最大化する進め方です。

4.電話対応AIの精度は実際どの程度か

「音声認識精度99%」といった数値が示されていても、その数値をそのまま自社の電話対応に当てはめることはできません。音声認識の精度は、評価方法や通話環境、発話内容などによって変わるためです。
ここでは、電話対応AIの精度を判断するときに確認したい指標と、精度が出ない主な原因を整理します。

(1)音声認識精度の見方|認識率の定義に注意

電話対応AIの精度を比較するときは、まず「何を基準に認識率を算出しているのか」を確認する必要があります。
同じ通話でも、文字・単語・用件の判別・業務の完了など、評価対象によって示される数値の意味が異なります。

指標測り方確認できること
文字単位の認識率全文字数のうち正しく変換された文字の割合音声をどの程度正確に文字へ変換できたか
単語単位の認識率単語ごとの正誤で判定発話内容を単語単位でどの程度正確に認識できたか
意図理解の正解率用件を正しく判別できた割合「予約」「配送状況の確認」など、用件を正しく判断できたか
業務完了率AIだけで用件が完結した割合実際の電話業務をどこまでAIだけで処理できたか

ベンダーが認識率を提示している場合は「何を対象に、どのような条件で測定した数値なのか」まで確認することが重要です。

確認すべきは、その数値がどの条件でどう測られたものかです。 そして最終的に見るべきは認識率ではなく、「AIだけで完結した通話の割合(業務完了率)」です。認識率が高くても、途中で有人対応への切り替えが必要になる通話が多ければ、自動化できる業務範囲は限られます。

業務完了率=AIだけで完結した通話数 ÷ 総着信数 (有人転送率の裏返しにあたる指標)

認識率が高くても、途中で有人対応への切り替えが必要になる通話が多ければ、自動化できる業務範囲は限られます。導入前に自社の入電データでこの数値を試算できるか、トライアルで実測できるかを確認しておくと、導入後のギャップを防げます。

(2)精度が出ない主な原因

電話対応AIの精度は、音声認識AIの性能だけで決まるものではありません。辞書の登録内容や質問方法、会話シナリオなどの設計も認識結果に影響します。

番号原因主な内容
辞書が整備されていない・自社の商品名やサービス名が未登録
・業界特有の略語や専門用語が未登録
・登録されていない語句を含む発話を正しく認識できない
質問の投げ方が悪い・自由回答では顧客の発話パターンが増える
・選択肢を提示すると認識対象を絞り込める
・質問方法によって、認識しやすい回答へ誘導できる
想定していた話者層とのズレ・想定していた話者層と実際の顧客層が異なる
・屋外や車内など、想定と異なる環境から発信される
・実際の入電条件を使った検証が必要になる
シナリオの分岐が深すぎる・分岐が増えるほど、途中の誤認識が後続処理へ影響する
・誤った意図判定によって別のルートへ進む可能性がある
・必要以上に細かい分岐を避ける
運用開始後に調整していない・実際の通話ログから誤認識した語句や発話パターンを確認する
・辞書や質問文、会話シナリオを修正する
・実際の入電に合わせて継続的に調整する

(3)精度を上げる方法|辞書チューニング・言い直し設計・確認復唱

電話対応AIの精度を高めるには、音声認識AIだけでなく、辞書・質問方法・確認方法・入力手段・運用方法を調整することが必要です。主な改善方法を整理します。

①辞書を調整する

自社の商品名・サービス名・部署名・業界用語などを辞書に登録します。正式名称と略称など、同じ対象に複数の呼び方がある場合は、それぞれの表現を登録しておくことで認識対象を広げられます。

特に、自社固有の名称や一般的な辞書に含まれない用語が誤認識されている場合は、実際の通話ログを確認しながら辞書を更新します。導入直後に特に費用対効果が高い施策であり、多くの製品で自社実施が可能です。

②重要な情報は復唱して確認する

氏名・住所・電話番号・日時など、誤認識すると後続の処理に影響する情報は、AIが聞き取った内容を復唱して顧客に確認します。

例えば「お電話番号は090-XXXX-XXXXでお間違いないでしょうか」のように確認を挟むことで、認識結果をそのまま登録せず、顧客による確認を経て次の処理へ進められます。

③認識できなかった場合の導線を決める

音声を正しく認識できなかった場合に、同じ質問を繰り返すだけでは会話を完結できません。そのため、あらかじめ次の対応へ切り替える条件を決めておきます。

  • 質問の表現を変えて聞き直す
  • プッシュ操作による入力へ切り替える
  • 有人対応へ転送する

認識できない状態が続いた場合の処理まで設計しておくことで、AIだけでは対応できない通話を別の手段へ引き継げます。

④情報に応じて入力手段を使い分ける

すべての情報を音声だけで取得する必要はありません。電話番号・注文番号・郵便番号などはプッシュ操作、漢字表記の確認が必要な情報はSMSによる入力など、取得する情報に応じて入力方法を切り替えます。

例えば、音声・プッシュ操作・SMS・有人対応を組み合わせることで、認識が難しい情報を補完できます。

⑤通話ログをもとに継続的に調整する

運用開始後は、実際の通話ログから誤認識した語句や、会話が途中で止まった箇所を確認します。その結果をもとに、辞書・質問文・会話シナリオを修正します。

電話対応AIの精度を確認する際は、実際の入電データをもとに継続して調整できる仕組みや支援体制があるかも確認します。

5.電話対応AIとIVR・電話代行の違い

電話業務を自動化・外部化する方法には、電話対応AIのほかに、音声ガイダンス、IVR、電話代行があります。
それぞれで顧客の操作方法・対応できる用件・ヒアリングの可否・運用方法が異なるため、自社の電話業務に合わせて選ぶ必要があります。

比較項目音声ガイダンスIVR(自動音声応答)電話対応AI(ボイスボット)電話代行(有人)
対応方式録音音声を再生プッシュ操作で分岐発話内容をAIが解析して応答オペレーターが応対
顧客の操作不要(聞くだけ)ボタン操作が必要音声で回答音声で会話
対応できる用件案内のみ事前に設計した分岐の範囲定型〜準定型の会話幅広い用件
用件のヒアリング不可選択肢の範囲のみ可能。氏名・住所などは製品による可能
24時間対応可能可能可能契約内容による
同時対応制限なしに近い多数対応可能製品による対応人数に依存
導入期間数日数日〜2週間2週間〜1か月以上数日〜2週間
費用感月額数千円〜月額数千円〜月額数万円〜従量課金または月額
向いている状況営業時間などの定型案内用件を明確な選択肢に分けられる場合用件の聞き取りや会話形式の受付が必要な場合人に

(1)IVRとの違い|ボタンで選ぶか、会話で用件を伝えるか

IVRは、企業側があらかじめ用意した選択肢を音声で案内し、顧客が電話機のボタンを押して用件を選択する仕組みです。例えば「予約に関するお問い合わせは1、配送状況の確認は2」と案内し、入力された番号に応じて次の案内や転送先を切り替えます。
一方、電話対応AIでは、顧客が話した内容を音声認識し、その内容から用件を判別します。「配送状況を確認したい」と話せば、AIが発話内容を解析して次の質問や処理へ進みます。

つまり、両者の主な違いは、IVRが「用意された選択肢から顧客が選ぶ仕組み」であるのに対し、電話対応AIは「顧客の発話内容から用件を判別する仕組み」であることです。

また、用件の聞き取りは電話対応AIで行い、電話番号や注文番号などの入力ではプッシュ操作へ切り替える設計により、両者を組み合わせることもできます。

(2)電話代行との違い|AIが対応するか、人が対応するか

電話代行は、企業に代わってオペレーターが電話に出て、用件の聞き取りや取次などを行うサービスです。電話対応AIとの大きな違いは、応対する主体がAIか人かという点にあります。

有人の電話代行では、会話の内容に応じてオペレーターが対応できるため、定型化しにくい問い合わせにも対応できます。一方、電話対応AIは、あらかじめ設計した業務やシナリオをもとに応対するため、定型〜準定型の問い合わせに対応する仕組みです。

費用の発生方法にも違いがあります。電話代行は従量課金または月額料金で提供され、対応量はオペレーターの人数に依存します。電話対応AIは、システムを構築したうえで複数の着信を処理する仕組みとなります。

そのため、自社に適した方法を判断する際は、入電件数に見合った料金体系か、用件をどこまで定型化できるか、人による判断が必要かを整理することが重要です。

6.電話対応AIを導入するメリット

(1)業務効率化と労働環境の改善

電話対応AIの効果は「人件費が減る」ことだけではありません。実務上、より大きいのはオペレーターの働き方が変わることです。

電話業務の負担は、件数そのものよりも中断の多さから生じます。
AIが一次受付を担うと、この中断が構造的に減ります。オペレーターに回ってくるのは、判断や交渉が必要な、本来スキルが活きる案件に絞られます。単純作業から解放されることは、対応の質を高めるだけでなく、離職の主要因である「やりがいのなさ」への対策としても機能します。

用件の自動判別によって誤接続や不要な転送が減るため、聞き直しや引き継ぎミスといったヒューマンエラーの発生余地も小さくなります。

(2)社内リソースの確保

電話対応を専任部署ではなく、他業務と兼務する社員が担っている企業では、効果の現れ方が異なります。

兼務体制の課題は、電話が他業務を圧迫することにあります。誰が出るかが曖昧なまま鳴り続ける、手が空いている人が都度対応する、といった状態では、担当者の作業効率が慢性的に低下します。しかも対応内容が個人の記憶に留まるため、引き継ぎも困難です。

一次受付をAIに移管すれば、社員は本来の業務に時間を割けるようになります。加えて、すべての通話が録音・テキスト化されて残るため、誰がいつどんな対応をしたかが組織の情報として蓄積されます。属人化の解消は、教育コストの削減と担当者交代時のリスク低減に直結します。

(3)顧客満足度の向上

自動化と顧客満足度は相反すると思われがちですが、設計次第で両立します。
顧客が電話対応で不満を感じる典型は、つながらない・待たされる・たらい回しにされる・用件を何度も説明させられるという4点です。これらはいずれも、人手の制約から生じています。

電話対応AIは、同時着信を並行処理できるため待ち時間が発生しません。用件を解析して適切な部署へ直接つなぐことができれば、たらい回しも予防できます。聞き取った内容を担当者に引き継げば、顧客が同じ説明を繰り返す必要もなくなります。

そして営業時間外の入電を取りこぼさないことの意味は小さくありません。問い合わせや予約の多くは、顧客が動ける時間帯(夜間や休日)に発生します。この時間帯を無人にしていることは、顧客の利便性を損なうと同時に、機会損失そのものです。

7.電話対応AI導入前に確認すべきこと

(1)自社の入電内容を種類別に棚卸しする

導入前に必ず行うべきなのが、入電内容の実態把握です。多くの失敗は、この工程を飛ばして製品選定から入ることに起因します。まずは、以下を整理してください。

確認項目把握すべき内容
入電件数月間・日間の件数、時間帯別・曜日別の分布
用件の内訳用件の種類ごとの件数と構成比
平均通話時間用件の種類別に測ると、どこに時間が取られているかが見える
発信元個人か法人か、既存顧客か新規か
時間外入電営業時間外の着信件数(取りこぼしの規模)
現在の対応者専任か兼務か、対応にかかっている総工数

この棚卸しができていれば、自動化対象を決められ、導入後の効果測定の基準にもなります。「何件をAIで完結させられたか」を測るには、導入前の数値が必要です。

あわせて、既存のCRM・予約システム・基幹システムとの連携要件も洗い出してください。連携できるかどうかで、実現できる自動化の範囲は大きく変わります。

(2)音声データ・個人情報のセキュリティ

電話対応AIは、顧客の音声そのものに加え、氏名・連絡先・問い合わせ内容といった個人情報を継続的に処理・蓄積します。通常の業務システムより扱うデータの機微性が高いため、確認は慎重に行ってください。
クラウド型サービスではセキュリティ対策が提供元に依存します。以下の点を具体的に確認しましょう。

  • データの保存場所(国内か海外か)
  • 通信および保存時の暗号化方式
  • アクセス制御と操作ログの取得範囲
  • 音声データの保存期間と削除の可否
  • 音声データがAIの学習に利用されるか、利用を拒否できるか

プライバシーマークやISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の認証取得状況も、客観的な判断材料になります。

(3)導入後の調整とサポート体制

電話対応AIは導入して完成するものではなく、運用しながら精度を高めていく前提の仕組みです。導入直後は誤認識や意図理解のズレが必ず発生します。重要なのは、それを改善できる体制があるかどうかです。

契約前に、以下をベンダーへ確認しておくことをおすすめします。

確認項目内容
シナリオ変更自社で対応可能か、ベンダー依頼が必要か。依頼の場合の費用と所要日数
辞書登録自社で追加できるか、追加できる語数に上限はあるか
チューニング支援運用開始後の精度改善サポートが契約に含まれるか、期間は限定か
回答内容の制御AIが話す内容を事前に確定できるか
・生成AI利用時は参照範囲を限定できるか
事前検証の方法・本番公開前に全パターンをテストできるか
テスト環境が提供されるか
レポート認識率・完了率・転送率などの実績データを確認できるか
トラブル対応障害発生時の連絡フロー、復旧目標時間、電話がつながらない場合の代替手段
アップデートAI機能のバージョンアップ対応範囲と追加費用の有無

特に見落とされやすいのが、シナリオ変更の自由度です。 キャンペーンや料金改定のたびにベンダー依頼が必要で、そのたびに費用と数週間の待ち時間が発生する契約では、運用が現実的に回りません。

技術的なサポートに加え、自社の業務を理解したうえで改善提案ができる担当がつくかどうかも、長期的な成果を左右します。

8.電話対応AIに関するよくある質問

(1)電話対応AIは自作できますか?

音声認識・音声合成・LLMのAPIは外部提供されているため、技術的には自社開発が可能です。実際、社内利用に限定した簡易的な仕組みであれば構築している企業もあります。

ただし業務利用となると、電話回線との接続(SIP/PBX連携)、同時着信の処理、通話品質の担保、障害時の復旧、個人情報の取り扱いなど、AI以外の領域で相応の実装と運用体制が必要になります。
スクラッチ開発の費用は、小規模でも数百万円規模から想定しておく必要があり、加えて開発後の保守・チューニングを担う人員も継続的に必要です。

現実的には、既製のサービスをカスタマイズするほうが、費用・期間・安定性のいずれでも有利なケースが大半です。 業務が特殊で既製品では対応できない場合に限り、フルカスタマイズ対応が可能なサービスを検討するのが現実的な判断になります。

(2)電話対応AIの費用相場は教えてください

導入する機能の範囲によって大きく変わります
文字起こしや通話解析など、既存システムへの機能追加であれば月額数千円〜数万円から始められます。一方、業務フローに合わせたボイスボットを構築する場合は初期費用が発生し、フルスクラッチ開発では数百万円以上になることもあります。

クラウド型のサービスであればインターネット接続のみで利用でき、オンプレミス型に比べて初期投資を抑えやすい点が特徴です。

料金体系はコール課金型と定額型に大別され、入電量によって有利な方式が変わります。オプション費用や、シナリオ変更時の追加費用も含めた総額で比較してください。

(3)小規模でも導入できますか?

月額数千円から利用できるサービスもあり、まずは営業時間外の受付や営業電話の振り分けだけを自動化する、といった小さく始める方法も可能です。

小規模で導入する場合の確認ポイントは、自社でシナリオを編集できるかという点です。専任担当を置けない環境では、変更のたびにベンダー依頼が必要な製品は運用が続きません。ノーコードで設定変更できる製品を選ぶと、無理なく運用できます。

9.まとめ

電話対応AIは、音声認識・自然言語処理・感情分析・音声合成を組み合わせ、受電から用件のヒアリング、取次、予約受付までを自動化する仕組みです。生成AIの活用が進んだことで対応できる会話の幅は広がった一方、回答内容を確実に制御できるかという新たな評価軸も生まれています。対応範囲の広さと回答の確実性のどちらを優先すべきかは、扱う業務の性質によって変わります。

一方で、複雑な交渉や強いクレームへの対応、雑音下や方言での認識、固有名詞の正確な聞き取りといった苦手領域は依然として存在します。導入を成功させるうえで重要なのは、高機能な製品を選ぶことよりも、自社の入電のうちどこまでをAIに任せ、どこから人が対応するかを正しく線引きすることです。

株式会社ストラーツの「電話応対AIサービス」は、高精度なAIを活用した音声認識・感情分析・自動振り分けを、フルカスタマイズでご提供します。

利用料以外のサポート費用や開発費は不要で、導入後の運用改善まで一貫して支援する体制を整えています。実際の聞き取り精度と分岐対応は、デモ体験専用ダイヤルでお確かめいただけます。電話対応へのAI導入をご検討の際は、ぜひご相談ください。

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